マグマ
「ホーネットおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
ホーネットがマグマに飲まれそうになり、俺は叫んだ。
「俺は大丈夫だ、孔明! じーたを頼む!!」
マグマはホーネットの足先を掠めた。反対側を見ると、じーたにもマグマが迫っている。
「じーたあああああああああああああああ!!!!!!!!!」
「う、うわ、危ね!! こ、孔明さん!! 俺はいいから、ホーネットさんを!!」
マグマは、じーたが数秒前に立っていた場所を一瞬で溶かし尽くした。
ここは、地下ダンジョンの奥深く。探検に来ていた俺、ホーネット、じーたは、罠に嵌まってしまった。
悲劇は、マグマで満ちたフロアで起こった。二叉に分かれた道の先に、二つの宝箱を見つけたところまでは良かった。しかし、二人がバラバラの宝箱に走って行って開けた途端、檻に捕らえられ、吊されてしまったのだ。
見ると、マグマがどんどん二人の足下に迫っている。状況は絶望的だ。
目の前には、二本のロープ。右のロープはホーネットの捕らえられた檻に、左のロープはじーたの捕らえられた檻につながっている。さっき少し右のロープを引いてみたのだが、ホーネットの檻が下に少し下がり、マグマとの距離が近くなった。それと同時に、じーたの檻は少し上に上がった。二人の檻は巨大な天秤のようなものでつながっており、引いた方のロープにつながっている檻がマグマに落ちる代わりに、引かなかった方が助かる仕組みらしい。
まさに命の選択。しかし、俺には選べない・・・・・・!
「くっそぉ!!! どうすりゃいいんだあああああ!!!!」
「孔明、早くしろ!! じーたを助けるんだ!!」
「孔明さん、早くホーネットさんを!!」
二人とも、自分を犠牲にして相手を救おうとしている。しかし、だからこそ、そんな優しい二人のどちらかを選ぶなんて、できない・・・・・・!!
「あっづ!!!! う、うわあああああ!!」
その時、じーたの絶叫にも似た悲鳴が上がった。足の裏をマグマに焼かれてしまったのだ。履いたクロックスが溶けている。
・・・・・・ん?・・・・・・おい、なんでクロックスでダンジョン来てんだよ。
「ぬ、ぬおおおおおおおおおおおおお!!!!」
反対側からも悲鳴が上がった。ホーネットだ。履いていたハイヒールが溶け、足裏を焼かれてしまったようだ。
・・・・・・ハイヒール? ダンジョンじゃなくても履いてたらこわいんですけど。
「おい、お前ら!!! ダンジョンだってのに、靴が変じゃないか!?」
「時間がないんだ!! 早くじーたを!!!」
「時間がありません!! 早くホーネットさんを!!!」
俺の疑問を無視して叫ぶ二人。しかし、時間が無いのは事実だ。
どちらかを選ばなければ両方が死ぬ。これは、感情論ではないのだ。
「・・・・・・くそおおおおおお!! 仕方ない、ここは年上のホーネットを・・・・・・!」
俺は、右手のロープに手をかけた。力を込めて、ゆっくりと引き下げていく。
「あああああ、孔明さん!! どうして!! どうして!!!」
叫ぶじーた。
「よくやった、孔明。後は頼んだ・・・・・・」
目を閉じ、覚悟を決めるホーネット。
ゆっくりと、ホーネットの足はマグマに迫っていき――
――刹那。
後ろから飛び出した影が、猛然とじーたの檻に向かって駆けだした。
人間とは思えない脚力で駆け抜け、跳躍。じーたの檻にたどり着いた。
「誰だ、お前は!? じーたを助けてくれるのか!?」
俺は、突然現れた謎の人物に問いかける。
謎の人物は振り向くと、ニヤリと笑った。
「俺の名は、たいにぼ。この男の、穴兄弟だ」
たいにぼは、圧倒的パワーで檻をこじ開けると、じーたを引きずりだした。ガッシリとじーたを抱きかかえる。
「あ、あの、ありがとうごz」
そして、そのままマグマ飛び込んだ。
「あ」
「あ」
俺は、ホーネットと顔を見合わせる。
・・・・・・その後、じーたのいない左のロープを引き下げ、ホーネットを助け出した。
「じーた、いなくなっちゃったな・・・・・・」
「ああ・・・・・・」
しんみりとする俺とホーネット。
俺たちは、じーたの消えたマグマを見つめ続けた。
――ここは、マグマの中。
じーたは目を開けると、たいにぼに叫ぶ。
「どうして! どうして俺を穀ろしたんだ!!」
たいにぼは、じーたを抱きかかえながら穏やかに言った。
「マグマの熱々トロトロセックスは、それはそれはいいものナリwwwwwwwwwコポォwwwwwww」
じーたは、不思議と熱くないことに気がついた。二人の愛のほうが、マグマよりも熱く燃えていたのだ。
「仕方ないやつだな・・・・・・。マグマより熱い俺の溶岩流、お前の火山口に逆噴火してやるよ・・・・・・」
二人は、マグマの中をどこまでも落ちていった。
熱い、熱い、愛とともに・・・・・・・・・・・・。
終わり
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