バンオウ-盤王-祝・完結!
ジャンプ+の金曜日の星、バンオウが感動の最終回を迎えた。
将棋マンガには名作が山ほどあるが、その勝負の熱さでいえば、やはり「月下の棋士」が嚆矢にて頂点だろう。あり得ないほどのテンションで描かれる対局は常軌を逸して熱い。対局室での流血、失禁、射精、死亡とやってないのは脱糞くらいではないかという凄まじさだ。将棋マンガの嚆矢でありながら、勝負の熱さの表現としてはちょっと邪道な表現が多い。
バンオウは直球で熱い。500年生きた吸血鬼が主人公という突飛な設定でありながら、凡人の人外対天才の人間というちょっと見たことがない構図に落とし込みつつも、その骨幹は勝負としての熱さがある。そもそも将棋の手の優劣は素人にはわかろうはずもないので、解説役が必須になるが、ここでさらにAIを持ち込んで、素人にも語らせるという新機軸を生み出したことが、月山の周囲の人の描写にも繋がっていて物語の説得力を増している。AIが人間が超えるようになっても、自動車より遅い人間のマラソンに一喜一憂するように、人との戦いの価値は変わらない。むしろ、無数にある選択肢から、わずかしかない正着にたどり着く困難さを示すことで、棋士たちの価値をより高く見せてくれている。
ベストバウトは対七島名人戦、これは実際の棋譜をベースにしたものだそうで、最高に熱い。作中ナンバーワンのみならず全将棋マンガの頂点に挙げたいほどの一戦だ。
作劇中の取捨選択も頭抜けている。決勝トーナメント戦開始を盛り上げてからの野球回、トーナメント上は重要であるはずのいくつかの戦いをダイジェストで済ますなど、お約束や惰性での展開をバッサリ切っているので、最後まで緊張感をもって終えられた。作者らが示したいことは存分に示せただろう。
この全八巻は将棋マンガの金字塔として記憶に残り続けるだろう。八巻と言えば、アニメでいえば大体2クール。どこか力のあるアニメスタジオに是非アニメ化してもらいたい。私の中では月山元は三木眞一郎さんということになっています。よろしくお願いします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?