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『intercection』というライブを観に行きました

5月22日、水曜日

うわ、マジでごめんなさい
話を少し遡ります

5月13日、月曜日
同期の『ミラ』というコンビの小松から連絡が入る。

小松が名前NGかもしれないので、伏せました

これは本当によくある話で、僕たち芸人はこうやってお互いのチケットを売り合ったりして、ノルマとかを乗り越えて舞台に立っている。年金と同じ相互扶助の関係であるので、僕は二つ返事でOKした。

僕はフルネーム公開OKです

いつも水曜は適当にバイトとかして過ごしているが、ちょうどこのタイミングで2年やったピザのバイトを辞めたのでめっちゃ空いてた。だから余裕でいけた。

なんか洒落たフライヤーだなーと思って概要を聞くと、どうやら芸人とバンドが出るライブらしい。場所も下北のライブハウスとのこと。

なんか面白そうじゃーん
面白そうなことやってんじゃーん

普通に楽しみだった。

マジでごめんなさい、ここから当日のレポです

5月22日、水曜日

え、ちょっと待って、もう一個思い出したい日がありました、うわどうしよう

いいですか…? 本当すみません…

5月17日、金曜日
この日は小松とラーメンを食べに行って、そのあとネタを書こうって約束してた

12:30に祖師ヶ谷大蔵の歴史を刻めに集合だったけど、どう考えても遅刻する時間に家を出たので、12:40に着いた。

二郎系を食べるとずいぶん前から約束していたのに、お互い空腹と二日酔いでコンディションが最悪だった。けど旨いので何とかなった。

ドトールに場所を移し、ネタを書き始める。
小松は、世田谷Payが使えずに不満げだった。

「え?こんな小田急線沿いなのに?沿いというか、これ駅構内だよ?隣のよくわかんない珈琲屋さんは使えるのに?」

そんなことを言いながら、ネタを書き始める。けど、ネタを書くって難しくて、小松が開いたMacを挟んで、僕はスマホで好きな惣菜発表ドラゴンのMADを聴き漁るし、小松はスマホで知らないバンドの曲を聴き漁っていた。

僕は『ダメな犯罪発表ドラゴン』を聴き終わったところで、やっと重い腰を上げ書き始める。小松は同じタイミングでようやく、Macの画面を明るくした。

次に新ネタを用意しなきゃいけないのは、仲間内で定期的にやってるネタ見せ回で、2週間ぐらい猶予があって、なんとなくこんなの書きたいな観たいなのがあったので、僕は割と心に余裕をもって書き始める。
一方小松は、先ほどまでの余裕そうな表情を一転させて、難しい顔をしている。さっきの音楽鑑賞は、現実逃避かはたまた、インスピレーションの想起だったかもしれない。

「今度のライブのネタが書けてないよ~」

そうじゃん!てっきり、同じ仲間内のネタ見せに向けてのやつだと思ってたけど、この人来週ライブあるじゃん!ヤバいじゃん!

僕は6割ぐらい完成させたネタを見て大変満足して、もう帰りたいなの雰囲気を醸し出してたけど、小松は全然焦っていたのでもう1時間一緒に粘ることになった。帰って映画観たいのにな。

結局そのあと1時間やったけど、小松は書き始めた新ネタ「科学者vsオカルトマニア」を仕上げることはできなかった。ただ、個人的に本番の仕上がりが楽しみになったので良かった。

駅で解散する。待ってる時間に書き始めたネタを深めたくて、家まで歩いて帰ることにした。
この人来週ライブあるじゃん。


ちょっと本当にすみません、ここからリアルに本編です レポをどうぞ

5月22日、水曜日

会場に向かうため、家を出る。18:30スタートで、駅から10分ぐらい歩くと調べたので、18:40に着く電車に乗った。俺はそういう人間だ。

下北沢駅に着くと、小田急の正面に相方の大井が立っていた。僕たちコンビは人が良いのと、僕は小松、大井はやかずと、それぞれミラと仲がいいことも相まって、二人して同期のライブを観に来ていた。恥ずかしいね

とりあえず手を振って近づいてみる。けど、なかなか気づかない。
どんどん近づくにつれて、彼の顔が勇ましく、凛々しく、雄々しいことに気づいた。

そうだこいつ!!!!!女と観に来るって言ってた・・・

ようやくこちらに気づいたときには、オスのフェロモンをムンムンに漂わせていたので、一言交わすだけですぐ会場に向かった。
大井はチェーンネックレスを付けていた。


20分遅れぐらいで会場に到着する。入り口で、伝えられていた通り半額ぐらいで入ることに成功した。大金を払ってNSCに入学しただけなのにこの扱い、犯罪にはならないだろうか。

通路を突き当たって左手の赤い防音扉、を開ける前に、何のプライバシーもない控室があり、そこに同期のハタノハタが見えたので一瞥した。ミラもいるのかな、と覗いたけれど、ハタノと同期の作家さん?みたいな女の子がいて談笑していた。
女の子は僕なんかのことを認識してくれていたが、僕はめちゃくちゃ初対面で知らなかった。おそらく、同期のライブを手伝ったりしているんだろうけど、そういうのに出たことがないので、軽く挨拶だけした。

他のみんなは?と聞くと、会場でバンドの人たちのステージを観ているらしいので、さっそく入ってみることにした。

重たい防音扉を開けると、漏れていた楽器や歌声が急に大きくなる。防音ってすごい。

入ってすぐの右手にバーカウンターがあって、ドリンクチケットを一枚貰っていたけど、その先で同期の姿が見えたので先にそちらに向かう。

モンタナの横山と、ミラのやかずが話しながらステージを観ていたので挨拶する。
今日のライブはどうやら、バンドの人たちが30分ぐらい演奏した後、僕たちの同期が連続で1ネタずつやる。そのあと、次のバンドが30分ぐらいやって、同期がやる。最後にバンドがやっておしまい。という香盤だった。いや、セトリだった。

周りを見ると、やはり音楽好きっぽいお客さんたちが結構いらっしゃって、なんだ集客できてんじゃんと思った。

ステージでは、『DOG STOCK』さんが演奏をしていた。正直なところ、音楽に疎い僕は今日出演しているバンドの皆さんの演奏を楽しめるか不安だった。好きな惣菜発表ドラゴンとかしか聴いてないし。

このタイミングで、ドリンクをもらいに行く。ハイボールを頼んだ。
舞台前に戻り、演奏を鑑賞し始める。
かっこいい。

稚拙な表現にしかならないのを後悔してしまうぐらい、そこには輝く男たちが存在していた。
え?なぜこの人たちのことを知らない?

自分に対してではなく、世間に対して疑問を抱いた。このレベルの人たちが全然、埋もれている世界なんですか?

そういった意味で、芸人と似ているなと、ここで改めて実感した。
よく聞く話で、芸人とバンドはよく似ているって聞くけれど、なるほど、そういうことか。
下北沢のライブハウスで、芸人とバンドが対バンしている。これは凄いことなのではないか?

そんなことを思っていると、「え?この後ネタやんの?」って急に思った。
出るわけでもない自分が、とんでもない不安に襲われ始めた。
奪われていた視線をようやく外して周りを見ると、隣に小松が立っていることに気づく。
「俺らこのあとネタ出来ないよ」
そりゃそうか。これからネタやるやつのほうが、よっぽど怖いか。
お客さんの層は、雰囲気だけどさすがに音楽を求めてきていそうな人たちが多かった。マジでどんな空気になるんだろう。

DOG STOCKさんの素晴らしい演奏が終わり、ライブハウスの店長さんが「この後はお笑い芸人さんのネタが始まります!」と述べる。マジで始まるんだ。
なんだか緊張してしまって、気づいたら最前列で同期の登場を待ちわびていた。うまくやれよとお祈りしていた。

「トップバッターは、ミラです!」

友達が先陣を切って登場した。幕をかき分けて、ドラムセットの後ろから出づらそうに、困った表情で出てきた。

ネタが始まる。本ネタに入る前に、この慣れてないステージについて話し始める。さっきまで体を思い思いの方向に揺らしていたお客さんが相手であるから、空気をつかみに行くのはかなり難しそうに思える。

しかし、その思いとは裏腹に、場の空気は凄くあたたかかった。結構ウケてる。
先ほど演奏を終えたDOG STOCKさんも、興味津々という感じでステージに食らいついていた。
なるほど、そうか。 これお互いに感化されるんだ。

共通項が多い分、シンパシーというかシナジーというか、同族意識みたいなものが生まれ始めている。
良い空気のまま、ミラが本ネタに入る。パソコン教室、という単語を聞いたとき、俺の知ってるネタ!と思った。なるほど、ドトールでの新ネタは2本目ですか いいネタができたんですねと思った。
知ってるネタなので、周りの反応に注目することができる。

1ボケ目、会場がどっと沸く。
あー!!!!!最高のウケ方じゃん!!!!!

それからは勿論、めちゃくちゃいい感じにウケつづけて、やり終えたミラはホクホクした顔で舞台から降りてきた。

続いて『風ちぐら』というコンビが出てくる。同期から嫌われてるのか好かれてるのかわからない澤田のコンビ、という情報しか知らなかったので、あの相方は誰だろう?と思った。
芸人は衣食住ぐらい、コンビの結成・解散が日常茶飯事なので、いくら同期とはいえ今あいつが誰となんてコンビを組んでいるとか、全然知らないことがある。
澤田のコンビ、この雰囲気で行けんのか?ちょっと不安視しながら見守る。
すげえウケる。てか、ちゃんと面白い。

なんなんだよ!めちゃくちゃ良いライブじゃんか!最高じゃん!
澤田の相方、あとで聞いたらNSCの時にめっちゃ結果出してるやつだった。心配して損した!

このブロック最後はモンタナ。一見するとぶっ飛んだネタをやるので、これは少し心配かもしれない。

いや、ウケてる!ちょっとアングラな感じが刺さる人たちも多かったかもしれない。

とにかく芸人1ブロック目は、完全に大成功といった感じだった。

続いてバンド2組目、『Funny Hill』さん。
恥ずかしながら初めて聴かせていただいたけど、お洒落でカッコいい曲の数々で、素人ながらとても好みのバンドだなと思った。
曲のテーマやメロディーがとても豊かな発想だなと、僭越ながらそう思い、このクリエイティビティを見習いたいなと感化された。

1ステージ目を終えた同期たちは、緊張からの解放と気持ちいいステージを終えた高揚感で、すっかり音楽にノリノリになっていた。

このあたりから、このライブは結構良すぎるライブなのでは?という雰囲気が、参加者、お客さん、運営の方、その場にいるすべての人から溢れかえって、このライブハウス全体に充満していた。

Funny Hillさんの演奏が終わり、続いては芸人2ブロック目。ここで、『JET-GIG』というライブを終えた『ガンプ』というコンビが到着し、このブロックで2本ネタをやると聞いた。

トップバッターは、またしてもミラだった。
完全にこのライブの空気は既に掴んでおり、ドラム裏からの登場も慣れたものである。

さあ、秘蔵っ子・ご自慢の「科学者vsオカルトマニア」を早くやってくれよ!
そんな期待をよそに始まったのは、消防士のネタだった。
なんだよ!!!見たことあるんだけど!!!

空気を掴んでいるし、ウケそうなネタだと知っていたので、このネタで笑いを搔っ攫う姿を見て、なんだよと思った。ズルいじゃん。

そのあとに出てきたガンプは、二人とも大学お笑いをやっていて上手いのは知ってたけど、それにしてもうまかった。あれ、一緒にライブとか出たことあるのにな。こんなうまかったっけ?

そのあとトラブルで順番が入れ替わっちゃった風ちぐらも、ライブ特有のあれだよねみたいな感じでウケてたし、1本目よりもさらにディープに、かなりあらびきなモンタナもそれはそれでウケてたし、そんなモンタナの後でちょっと空気が変わった中、また自分たちの空気に持っていくガンプもそりゃ、ウケてた。

俺はこのあたりから、普通に悔しくなっていた。なんで金払ってこんないいライブ観に来てるんだろう

出たかったな~

あ~あ

歯を食いしばってたら、最後のバンド、『笑的惹句』の出番になる。このライブの主宰者、小松のバンド。

小松のバンド!?!?!?!?!??!?!?!?!?!?
主宰者・小松!?!?!?!?!??!?!?!?!?!?
主宰者小松のバンド!?!?!?!?!??!?!?!?!?!?

え、ちょっとまってよ
こんないいライブを打って、自分も出役で出てきて、それも、ネタもやって、曲もやんの!?!?!?!?!??!?!?!?!?!?
あんまちゃんと聞かずに来ちゃったけど、え、そんな事すんの!?!?!?!?!??!?!?!?!?!?

めっちゃ気持ちいいじゃん絶対・・・

はあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

呼べよ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

俺も~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

出役として~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

客じゃねえだろ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ここで完全に、このライブへの感想がエキサイティングからジェラシーに変わってしまった。
ふざけんなよ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

自分が気持ちよくて最高になれて最高なライブに、客として呼んでんじゃねえよ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『ウエディング・ベル』かよこれ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

こんなにいいライブ作り出して、出役であんだけウケて、最後に自分もバンドやって、気持ち良すぎだろ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

同期に金払わせてオナニー見せてんじゃねえよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

くたばっちまえ、○ーメン だよ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

俺は最後、小松の演奏を、ライブハウスの構造上ステージを隠してしまっている邪魔な柱に重ねて聴いてやった。なにも観たくなかった。

ステージの最前列で、やかずと大井と女が手を突き上げて盛り上がっていた。なんでそんなことができるんだよ、お前たちは。

こうして、ヘッドライナーの演奏をろくに聴くこともできず、大団円で幕を閉じた『intersection』を、足早に去ることにした。

最悪だ、気分が悪い。

家に帰り、めちゃくちゃ打ち上げを楽しんでいるであろう小松に、このみっともなさ過ぎるジェラシーを込めた労いのメッセージを送る。

「二回目やりたい気持ちているからその時はよろしくね」

うるさい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

既読無視した。


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