ボロット第二部第0話「カフェGOPAS」

響「・・・・・。」

玉神響(タマガミヒビキ):18歳。志望校の大学受験に失敗し、この4月から滑り止めで合格した私立桜花大学に通う一回生である。周りは偏差値の低いバカばかり。大学の授業も退屈。不合格を知った日から、全てのことに興味がなくなっている。

優人「おい、ヒビキ、サークルの勉強会来いよ〜。」

中里優人(ナカサトマナト):18歳。大学の入学説明会で響と知り合う。藤浦ユミカが作ったサークルに無理やり響を誘う。勉強は得意ではないが頭は良い。明るく社交的な性格。

悠実香「響くんのあの技、みんなに披露したら受けるんじゃない?」

藤浦悠実香(フジウラユミカ):19歳。桜花大学でサークルカフェ「GOPAS」を経営・運営する二回生。4月に新入生の響と優人をサークルに勧誘した。サークル活動と称して、響と優人をGOPASの店員として働かせている。

サークルカフェ「GOPAS」とは、藤浦ユミカが去年新しく作った大学公認のサークルで、飲食店の経営について研究することがお題目であるが、実際は、大学の空いていた建物の一階を部室という建前の喫茶店に大改造し、大学から活動資金を受け取りながら、コーヒーやサンドイッチ、ケーキなどを学生に販売している事業活動である。

3人はGOPASを19時に閉めると、食器を洗ったり、店内の清掃をしながら、サークルの勉強会について話していた。当然勉強会も建前で、中身は他のサークルとの合同コンパである。

響は大学の同級生とつるむのが苦痛で、コンパにはまだ一度も顔を出したことがなかった。響の時間は、志望校の合格発表で自分の受験番号がリストになかった時から止まっているのである。このサークルにも全く興味はなかったが、一回生の間は必ず何かのサークルに所属するようにと、大学からの強い指導もあり、優人に請われるまま入会したのである。やる気は全くないが、喫茶店の仕事はそれなりにしっかりやっていた。

喫茶店の灯りを消して、悠実香が店内の施錠を確認し、3人が店内から出て、最後に入り口の鍵をかけると、外はすでに暗くなっていた。

悠実香「後輩諸君、お疲れさま!
    今日は売り上げ2万円でした。まぁまぁね。」
 優人「店長、バイト代いつ出るんですか?」
悠実香「これはサークル活動なんだから
    利益は出せないのよ。大学からお金ももらってるし。」
 優人「超ブラック企業じゃん!笑」
  響「・・・・」

3人は大学の体育館の脇を通り、駅に近い西門の守衛所にさしかかっていた。

悠実香「ねぇ、今から飲みに行かない?」
 優人「いいっすねー!先輩のおごりっしょ?」
悠実香「ま、日頃のお仕事への感謝としてならね。
    響くんも来るでしょ?」
  響「俺、今日はいいです。また今度で。」
悠実香「えー、悲しい˚‧º·(˚ ˃̣̣̥᷄⌓︎˂̣̣̥᷅ )‧º·˚」
 優人「俺は先輩と二人でも全然問題ないっすよ(*´д`*)ハァハァ」
悠実香「響くん来ないなら、また今度にしよっか。」
 優人「えー!
    おいこら響、来いよ!」
  響「悪いけど、気分じゃないんだ。
    やることもあるし。」
 優人「ん?
    やることってなんだよ?」
悠実香「なになに?私も知りたいー。」
  響「しょーもないもんだよ。
    とにかく今日は帰るので。」

響は手に持ったスマートフォンで駅の改札を通ると、二人とは反対方向のプラットフォームに向かった。

 優人「らしくないな、アイツ。
    いつもならなんだかんだで来るのに。」
悠実香「でも、大学に入ってからずっと元気なかったから、
    やる気がちょっと出たみたいで安心した。」

二人が乗った電車はスピードを上げ、二人はそれぞれつり革と手すりに掴まった。

 優人「彼女でもできたのかな?」
悠実香「そんな感じはしなかったけど。
    そうなのかな?」
 優人「それは明日確認するとして、今日は二人で飲みましょう。
    焼き鳥の美味しいお店がこの次の駅にあるんすよ!(。・ρ・)ジュル」
悠実香「ごめん。私も他にやることあるの思い出した。
    今日は解散ねー。」
 優人「えー、悲しいです。゚(゚´Д`゚)゚。」

悠実香は優人より先に降車し、他の乗降客に紛れすぐに見えなくなった。

響が言ったやる事、それは1週間前に彼の目の前で発生した交通事故と関係していた。その事故は、信号待ちをしていた小学六年生の男の子に車がつっこみ、不幸にも小学生は死んでしまった。響はその一部始終、つまり事故発生だけでなく、無くなった小学生の両親に事故の様子を事細かく説明したところまでの出来事、それに対して自分が全くの無力だったことに、ひどいショックを受けていた。

なんとかできないのか、その強い思いから、このボロットの物語は始まるのであった。

つづく

ボロット物語 第二部 第一話 「交通事故と死」
https://note.com/bettergin/n/n7812f7bed2d9
ボロット物語 もくじ
https://note.com/bettergin/n/n7e1f02347fba

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