SONY PTZオートフレーミングカメラ『SRG-A40』 運用テスト
こんにちは、秋葉原ベストセラースタジオの鳥居です。
今回は(株)DVCの中溝社長にご協力いただき
SONYさんのPTZオートフレーミングカメラ『SRG-A40』を
現場で収録とテストをしました。
映像制作機器販売 株式会社DVC
このカメラの特徴としては、
高度な追尾:PTZオートフレーミング機能
4K出力可能
RTP、SRT、VISCA over IP、NDI|HX(要オプション) など
各種プロトコル対応高倍率ズーム:光学20倍、超解像モード40倍
(フルHDの場合、4K時30倍)最短撮影距離 80mm(ワイド端)〜800mm(テレ端)
PoE++対応
【Ver.2.0新機能】複数人フレーミング機能(最大8人)
顔認証機能
画角調整機能
このような機能を備えています。
今回はこの中でオートフレーミング、SONYのPTZカメラのバージョンアップで追加された機能を中心に書いていきます。
PTZオートフレーミング
まず「PTZオートフレーミング」についてですが
「被写体に対して自動追従してくれる機能、またそのカメラ」のことを
PTZ(カメラ)と呼び、
「被写体を適格な画角・構図に収めること」をフレーミングと呼びます。
つまり「PTZオートフレーミング」とは
「被写体を常に適格な(自然な)構図内に調整しつつ、自動追従する機能」
ということです。
本来は熟練のカメラマンに要求されるスキルが、カメラの機能として搭載されていることになります。
下記動画はひとりの登壇者をPTZオートフレーミング機能を使って収録したものです。
あらかじめ決めた構図内に被写体を収めつつ、同じ構図になるようにカメラ側のズームで常に調整してくれます。
多少のカクツキは見られるのですが、被写体の身振りや動きの緩急にとらわれることなく、常に画角のド真ん中・全く同じ構図のまま追従してくれています。
被写体〜カメラ間の距離や被写体の動きに合わせてスピードを調整することで、より追従が自然なものーカメラマンの動きに近いものーに調整が可能となります。
ズーム/パン・チルトスピードがそのままカメラの追従感度に直結するため、基本的にはやや遅めのスピードにしておいた方がより自然な動きに近づきます。
速すぎる=感度が高すぎると、少し動いただけでフラフラした落ち着きのない画になってしまいます。
複数人フレーミング機能 ※Ver.2.0新機能
続いて「複数人フレーミング機能」については
今回のSONY製PTZカメラのアップデートで追加された機能です。
基本的にはPTZカメラの追従は、ひとりの被写体に対して常に張り付くように動きますが、この機能では指定した人数をフレーム内に収めるように動作します。
上記画像は3人に指定した例ですが、
カメラの範囲内で認識された被写体のうち、3人をクリックで指定し
(緑枠になった人)、その3人が均一にフレーム内に収まるように、カメラ側のズーム・パン・チルトを調整します。
SONY製PTZカメラの特徴として、人物を骨格で捉えて認識するため
認識時に顔が見えていない後頭部でも人として認識する場合も多く、
使用時には画角内に被写体だけ映る環境での使用を推奨されています。
なお、オートフレーミング時の挙動として共通ですが
事前に設定したスタートポジションに戻ってからオートフレーミングを開始するため、あらかじめスタートポジション内に被写体がすべて収まるように(逆にそれ以外は入らないように)設定しておくと、より円滑な運用ができます。
顔認証機能 ※Ver.2.0新機能
さらにオートフレーミングの精度を高める機能が、こちらも今回のアップデートで追加された「顔認証機能」です。
先でも触れたように、SONY製PTZカメラは人物を骨格で捉えているため、被写体が横を向いたり、後ろを向いたりして顔が見えなくなっても追従し続ける認識の強さがウリなのですが、それがアダとなり必要な被写体とは違う人物にフォーカスしてしまうことがあります。
それをサポートするのがこの顔認証機能です。
一旦被写体の方をカメラの画角内に収めてキャプチャ、認識された顔を登録することができます
(最大40名まで)
正面向きからおよそ左右30度程度であれば認識しやすいようです。
キャプチャを何回かに分けて都度、顔登録していくことも可能です。
ひとりひとりカメラの前に立ってもらって順に認識していくのが確実と思われます。
また、それぞれ登録した顔に優先度をつけておくこともできます。
人数が絞られた際に優先度が高い順に認識されるなど、より精度を高めた運用が可能になります。
画角調整機能 ※Ver.2.0新機能
そして画角調整機能。PTZカメラは常に人を画角の中心に捉えた動きをするのが基本となりますが、こちらは画角内の自由な位置に被写体を位置を決めておくことができます。
たとえば画面の左半分にスライドなどを投影した画にしたいという場合、
被写体が常に画面右側に固定された画にしておく、ということが可能となります。
ほかには上・下に常にテロップ帯が入るという場合に被写体に被らないよう、あらかじめ上側に余白を作った配置にしておく、というような運用も考えられます。
映像ミキサーのソースとして使う場合に様々な応用が効きそうな機能だと感じました。
その他
他にも応用例として、ここまでの操作はすべてWebブラウザ上で操作できるため、タッチパネル対応のPCやタブレット・スマホのブラウザで開けば
指でのタッチ操作が可能です。
顔の再認識時のタッチや、画面上のジョイスティックでのカメラ操作など
こちらの方が操作しやすい場面もあるかと思います。
専用アプリではない故の汎用性も強みだと感じました。
一方で、カメラ自体の設定についてですが
アイリス・ゲイン・シャッタースピードの設定はあるものの、
ホワイトバランスの設定についてはやや簡易的なものになっています。
フルオート(自動)、屋内・屋外プリセット(ともに固定値)、
ワンプッシュ、そして手動設定については
R-Bゲインの調整となっており、色温度での数値指定はありません。
ほかのカメラと色味を合わせる場合はワンプッシュで合わせるか、
PTZカメラ側の色味にほかのカメラを合わせるか、というのが実際の運用になると思われます。
また、余談ではありますが
骨格から人を認識するという機能上、マネキンやトルソーなども認識される場合があります。
帽子やウィッグなどを被せるとテストの際に使えるかもしれません。
まとめ
今回はPTZカメラ「SRG-A40」について、オートフレーミング機能・Ver.2.0を中心に書かせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
常に真ん中に捉えようとする、という動作の都合上、カメラマンが追従する場合と比較するときと異なる挙動・不自然さを感じる部分はどうしてもあるのですが、それでもずっと安定して軽やかな動きをし続けた映像には目を見張るものがありました。
これまでのSONY製ビデオ・一眼カメラ、PTZカメラ、独自のAIアルゴリズム・リアルタイム骨格検出など、過去のすべての映像分野から培われた
メーカーの技術研鑽の賜物だと思います。
もうただのリモートカメラとは言わせない、そんな気迫を感じたカメラでした。
現場からは以上です!