ああ、行ってしまった

俺の実家の最寄りまで東京から一本で行けるが、夜だと20分間隔である。
さっき、俺がホームに降り立つや否や、最寄り行きの電車が出発した。
「ああ、行ってしまったんだね」
そう心の中で呟いた。この電車に乗れば20分先の未来に行けたと言うのに。

就活という先の見えない闇をかかえ、心にも若干の闇を潜ませている僕はそんなことを考える。
すると、イヤホンからaviciiのウェイクミーアップが流れた。
彼はもういない。しかし、彼の音楽は残り続ける。それってなんかすごい気がしてきた。彼に未来はないけど、未来永劫彼の音楽は残り続ける。ファンでもなんでもないけど。
そんなことをふと思っていたら、俺が乗る電車が来た。角の席に座った。
あの電車を逃したことで一人考えることができた。ありがとう、先に出発してくれて。

そしてごめん俺の前に立った人。俺が降りるのは一時間後なんだ。