構造物基礎の選定について

 構造物基礎は良質な地盤に指示させることが必要です。これは、十分な支持力が得られ、有害な沈下が生じないということです。良質な地盤の目安としては、粘性土層はN値20程度以上、砂質土・砂礫層はN値30程度以上になります。
 基礎形式の選定には、1.地形条件、2.施工環境および経済性を考慮して選定する必要があります。

1.地形や地質条件の考慮

 傾斜や凹凸等の地盤変形が生じやすい不安定な地形の場合は、予想される変異に追従できる基礎構造とし、変異が生じても支障のないように設計しなければなりません。また、津波時の浸水が予測される場合は、基礎の洗堀の影響を考慮し地盤改良工や杭基礎等の採用を検討する必要があります。なお、地質条件の考慮する内容としては、以下の3点がポイントになります。

(1) 支持層の位置
 支持層の位置が深いことで杭基礎とした場合、基礎構造費が上部構造の建築費と比べて高額となる場合には、上部の軟弱層の支持に頼る基礎形式を検討する必要がある。例えば、摩擦杭基礎の採用や建物底面下にある軟弱地盤を一部改良する地盤改良工も考えられます。

(2) 中間層の状態
 中間層が、圧密等により沈下する恐れがある場合、杭基礎等では、ネガティブフリクションを考慮する必要があります。また、中間層にある程度の硬さと厚さ、大きなレキがあると、この層を打ち抜ける杭の種類が限定される場合があるので注意が必要です。

(3) 地下水
 被圧水があり、その水頭が表面水より高いと施工不能・困難となる工法があります。また、地下水の流動速度が大きい場合は、良好な水中コンクリートの打設が難しいことから場所打杭は避ける必要があります。

2. 施工環境の考慮
 施工環境の考慮として、隣接構造物・埋設物への影響、作業空間、作業面積、騒音・振動、給排水条件、資材等輸送条件への考慮があげられます。

(1) 隣接構造物・地下埋設物への影響
 既存の構造物や埋設物に近接して工事を行う場合には、基礎工法に制約が生じることから埋設状態も考慮した基礎工法の選定が必要となる。一般的には、打込み杭やオープンケーソンは周辺地盤に変状を与えやすいので、影響を極力抑える様な施工上の配慮や、他の工法を用いることが必要である。

(2) 作業空間、作業面積
 基礎工法選定において、施工規模を踏まえて、作業空間(機械高)、作業面積、機材置場等にも配慮する必要がある。たとえ経済性等で有利なものであってもこれらの制約により採用できないことがあるので注意が必要です。

(3) 騒音、振動
 騒音防止条例で規制されている区域では、打ち込み杭の施工は困難であり、規制対象外の場所においても、周辺に構造物がある場合は、問題が生じることが多い。該当する場所で施工する場合には、低騒音・低振動もしくは無振動による工法の検討が必要になります。

(4) 給排水条件・資材等輸送条件
 大量の水を必要とする場所打ち杭等を施工する場合は、その給水や泥水処理に問題ないか検討が必要となります。また、大型機械、大きな資材を使用する場合は、輸送の可否、運搬費等についても検討が必要になります。


3. 注意点・・・同一構造物での異種の基礎併用は原則行わない

 異なる基礎を同一の構造物に併用すると、沈下量に差が生じて障害を起こすことがあります。特に地震時では異種基礎間の境界において応力集中が生じ、被害を生じることがあるので、原則として異種の基礎を同一構造物に用いるのは避けましょう。
やむを得ず、同一構造物に異種の基礎を採用する場合には、施設の用途や機能等を十分考慮し、沈下等に対して検討を行い、載荷試験等による調査、境界部の補強あるいは伸縮目地の設置等の必要な処置を施す必要があります。


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