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(変な)名刺を作ろう(後編・通常公開版)

書く気力が飛んでしまい放置していた名刺を作ろう記事の後編です。

この記事は通常公開版と設定データ完全公開版の2つがありますが、普通に観覧いただく読み物としてはこの現在観ていただいている通常公開版で完結しております。

設定データ完全公開版には、長年自身で実験したり制作してきた中の多数の設定や詳細な機材の型番、通常版では省略した制作コメントを追記してある制作に興味がある人向けの補完版記事です。
いつか同人誌にして出そうかと思っていた内容なのですが、そんな機会がいつ来るのかわからないのでせっかくなので有料記事扱いで試験的に頒布してみることにしました。

(完全版は後日公開予定です)


【用意するもの・機材関連】


インクジェットプリンタ


ごく普通の家庭用インクジェットプリンタです。
自分の趣向でCanon製を買い替え時も使い続けていますが、OHPフィルムへの印刷ができるものなら基本何でもOKです。
ちなみに同一メーカーのプリンタでも、何年か経ち世代が変わると同じ設定にできなかったり、インクと用紙の相性が変わってしまい最適な設定から外れてしまったりという事が毎回起こっているので出来る限りプリンタ本体は変えたくないです。
インクも同じで高いのは承知で純正一択です。リサイクルインクや詰めるものは成分がやはり違うので同じ印刷結果を期待できないですし、何より前述の通り同じプリンタ本体を使い続けたいので消耗を早めるリサイクルインクは使いたくないです。

マイクロドライプリンタ


この制作方法の核となるプリンタ。
自分はMD-5000というのを使用していますが特性上5500の方がUSBで通信できるので良いかと思います。
このプリンタ最大の特徴が、使用するインクが液体ではなくインクリボンを使うという点。バイオハザードのセーブポイント位でしか近年は聞かなくなっているであろうアレです。リボン状のインクを熱で転写するため、インクジェットでは印刷不可能な様々な媒体に印刷をしたり、インクジェットでは印刷できない白色、メタリック色、更には金銀箔押しまで可能という優れもの。後、乾燥しているものという事もあり20年かそれ以上前に製造されたインクでも普通に正常に使えちゃいます。

ただし良いとこばかりではなく、通常のカラー印刷の綺麗さは現在のインクジェットにはとても及ばず上記のメリット以外はほとんどデメリット、これ自体の最終モデル発売から既に25年が経過し、メーカーからのアフターサポートやインクリボン販売もとっくに終了、自身が手に入れた2011年辺りではまだその辺り不自由がなかった時代でしたが、現2024年のとりまく環境ではとてもお勧めできるものではなく、持っている人ならともかく今から導入しようなんてことはとても勧められません。
現代的には何が主流なのか知らないですが、一昔前はスタンピングリーフが流行っていたのを見たのでそっちが主流なのではないでしょうか。

ラミネーター


これまた普通のもの。
作業時にやりたい作業次第で出力をいじるので、温度調整機能があるものが良いです。

出力用サブPC
実はMDは印刷用のドライバも非常に古く、64bitOSに公式対応していません。
有志が制作した64bitでも動くドライバがあるそうなのですが、自分は印刷作業だけに別途32bitOSのノートPCを使っています。


【用意するもの・材料、工具関連】


OHPフィルム


もうOHPなんて現代じゃあ使われてないでしょう()
昔はどこの学校にもあった(?)透明なフィルムをスクリーンに投影するための機材で、そういうの向けにPCで印刷するための透明なフィルムです。
簡単に言うと透明なプラスチックフィルムです。
制作ではこれにカラー印刷して母体にします。本来の使い方してないですが、名刺やカードを作るという状態において最も適した用紙がこれなんですね。

ラミネートフィルム


どこにでもあるラミネートフィルムです。
目的が2つあるため、A4サイズとL版サイズと2つ用意します。
また、目的と特性の都合で2つのメーカー使い分けています。
が、この名刺やカード制作においては半分本来の使い方をしますが、残り半分は本来想定されているはずがない方法で使用します。

ホログラムシート


裏面がノリになってるキラキラなホログラムシートです。
これを使いたいもののサイズにあらかじめカットしておいて使用します。
ハンズとかでも売ってますがあれはかなり割高+欲しいホログラムパターンを扱っていないので、自分は大体通販で一気にメートル単位のロールを買って使っています。
最近ではダイソーで100円で2枚とか手に入るようになり、ちょっと作りたいなという人にはそちらがおすすめです。
名刺じゃなくて応援うちわとか向けにも。
買い過ぎたと思っても、色々な制作物に転用できるのでなんだかんだ使い道はある材料。

カッター
ごく普通のカッターです。
鋭く切れれば何でもいいです。

定規


まっすぐに、ズレ厳禁でカットする場面が多いのでこれは重要です。
オススメは裏面に滑り止めがついている定規。
これがあるないではマジで差が凄いので滑り止め付き必須レベルです。

カッターマット
カッター出来るのを多用するので必要です。
これもまあまあ重要で、使ってくうちにマットが切れて小さなごみが出ないものが良いです。出てしまうのであればどんどん使い捨てする気持ちで。
写真は1枚だけですが、ホログラムシートをロールから切るとき等用にもっと横長のものも使っています。

テープのり
表裏を貼り合わせする作業がある際に使います。
強力に接着できるものが良いです。


【本制作】


詳細に機材を紹介していきましたがここからが制作本番です。

まずは印刷データの制作から入るのですが、通常印刷業者に入れるなり、自身で印刷する場合は表のみ、もしくは表裏でデータが1か2枚あれば良いと思います。
今回のような透明とか、キラキラとか、箔押しありの名刺を制作する場合は完成時の仕様別に複数枚の印刷データを制作する必要があります。

今回の作例で制作している名刺の場合は、
・カラー印刷用データ
・白色印刷用データ
・箔押し、メタリック印刷用データ

と片面だけでも3つのデータを制作しています。
裏面用はカラー印刷用のみで1つだけですが、その気になれば表裏正面にこれらを施すこともできるのでその場合はさらに増えていきます。
難しい説明よりも実際のデータを見ていただいた方が早いのでデータを見ていきましょう。

今回のコンセプトは、自分が出来る加工全部載せセットです。
普通なら、キラ名刺、クリア名刺のどちらかをベースに箔押しをしたり、自分が好きな名刺に銀テープを封入するとかそういう感じなのですが全部です。そこまでするかって位全部突っ込みます。


カラー印刷データ

2案作りましたがメインは左で右はついでです


カラー印刷データはインクジェットでOHPフィルムへの印刷用です。
注意点としては、制作や印刷の特性上箔押しやメタリック印刷を入れたい部分は白抜きします。後の制作で説明するのですが、この制作方法では箔押し、メタリック等の印刷はこのカラーフィルムを通す形で見える形になるためにその部分は無色になっている必要があるのです。
ここ印刷業者に入れる場合は逆に白抜きしてはいけないかと思います。

イラストはいつもお世話になっているぱお先輩さんに書きおろしていただいたカチコミかけそうな夏葉。

2種類ベースを作ったのですが、実際メインは左の左右にカラーがないタイプです。左のだけ文字が入ってないように見えますが、その分のデータは次以降の箔押しにレイヤー分割されているためです。
また、左にだけある下部の四角い白抜きは銀テープが入る部分の窓です。


白色印刷データ


白色データは、完成時に光って欲しくない、透けてほしくない部分のマスキングの役割をします。そのためこのような感じに人物シルエットのようなものが出来上がります。
白背景に黒ベタのデータになってますが、実際には黒の部分が白で印刷され、白背景は何も印刷されません。
2タイプあるのは上記で載せてるカラーデータ別の仕様のため。
左のだけ銀テープが入る窓があるので白抜きしています。別に塗りつぶしても良いんですが右データと紛らわしかったので。


箔押し、メタリック印刷データ


箔押し、メタリックは上記の白色印刷と同じ形式でこの部分を箔押ししたい等部分を黒で指定して作ります。
あまりやることはないですが、金箔銀箔押しを1枚に詰め込んだり、複数色のメタリックを詰め込みたい場合はその必要分データを作ります。
色替えだけなら1つのデータで可能です。
左のだけ、銀テープ窓の周囲に箔押ししたかったので枠が追加されています。


では、データ揃ったのでいざ印刷開始。

まずはインクジェットでOHPフィルムにカラー印刷。
この際制作の仕様上、左右反転させてから印刷します。必須ではないのですが、反転させた方が後に耐久性の向上にもつながります。
A4で名刺からトレカサイズなら8面付出来ます。
89x63のトレカサイズだと用紙目いっぱいのギッチギチですが問題なし。
この制作方法のいいところは、印刷業者を通さないので最低ロットが存在せず、1枚から好きなように作れることです。色替えや加工替えのバリエーションも作り放題。

分かりやすいように右半分だけ下にコピー用紙を置いていますが、この状態ではこのような全体が透明な状態です。
印刷したシートは少しでいいので乾燥させてから次作業なのですが、自身が使用しているシートは乾燥が非常に早く正直5分も乾燥させれば十分です。余裕あるときは1日置いていますが特急な際はもう速攻次工程に入っちゃいます。
1枚1枚に切り分けて次工程で使えるようにします。

この先はMDでの印刷なので、出力用PCから印刷。
まず先に白色1色で白色データを印刷します。

で、ここで問題です。この白色印刷、さっきのカラー印刷と組み合わせるわけなのですが、異なるプリンタで印刷するものがそんなコンマ数ミリのズレも許されないこの制作で見当ぴったりに印刷できるのでしょうか?
正解はNOです。できるわけありません。ではどうするのでしょうか?

その正解は、何とラミネートシートへ印刷するです。
インクジェットしか使わない環境でしたら意味不明すぎる方法ですが、実はMDのインクリボン印刷はラミネートシートという紙ですらないプラ材へダイレクト印刷が出来てしまいます。もちろんメーカーの想定しているわけがない裏技です。

A4のラミネートシートを結合部を切って切り離し2枚のシートにし、ノリ面になる方へと印刷をします。これで白色印刷された透明シート(ラミネートシート)が出来てしまいました。

箔押し等をしない場合はここで終了ですが、今回は箔押しもするのでこの白色印刷されたシートに対して更に箔押し、メタリックの印刷をします。
これぞ、MDでしかできないインクリボンを使った印刷です。
重ねちゃってますが、金銀箔押し以外にピンクとブルーのメタリックカラーでも印刷しました。
メーカーオフシャルの色で金箔、銀箔、ゴールド、シルバー、ピンク、ブルーメタリックが可能です。裏技を使えば沖データ等他メーカーのも使えるはず。

箔押しの印刷が出来たら、これで印刷作業はおしまい。
この後の貼り合わせ向けに印刷したラミネートフィルムを切り分けていきます。


各種切り分けが終わったパーツ状態。
これらを貼り合わせていきます。
固定方法はセロテープで。コンマ数ミリのズレでも完成時には大きなズレになるので、とんぼ基準に見当合わせて固定します。

このままラミネーターに通してもいいのですが、厚みが欲しいので厚み増しの加工も込めてL版サイズのラミネートで全体を挟んでからラミネーターへ。


熱入れして貼り合わせが済むと、非常に高い透明度で透明なカード状態になりました。この状態で切り抜いてあげればクリアカードとして完成です。
今回はキラカード仕様にするのも兼ねているのでまだ切り抜きません。
ちょっと人物部分の隠ぺい力が低いように見えますが、経験上これで十分です。どうしてももっと透けないようにしたい場合は白色印刷の際に2回印刷します。


ホログラムシートで全体をキラカード化できます。お好みのパターンを用意すれば好きな光り方に。今回は結構手がかかる部分キラにしたいがために、光らせたい部分のみをサイズに合わせて切ったものを使用します。
部分的にやらなければ定型サイズに切って貯めおいて使いやすく保管しています。

ホログラムシートを貼ったらとんぼ目安に切り抜き。最後まで目印としてとんぼは重要です。この際に銀テープ入りとかさらに加工をする場合は窓も一緒に切り抜き。切り抜いた切り口はわずかに浮く傾向があるので、もう1回ラミネーターに通して補正します。


追加工が無ければこれで1枚の完成です!
今回は銀テープの封入と、裏面の貼り合わせが残っているのでもう少し続きます。

銀テープは切った窓部分から見えるようにしたいので、裏面を貼り合わせるのと兼用でその中間に銀テープをサイズ合わせて切って封入します。
スポーツカードのジャージカードからヒントを得たアイデアですね。

銀テープ有無に限らず、貼り合わせはテープのりが最強です。
凸凹にならず、均一な厚さで接着層が作れます。
今回裏面だけは名刺印刷で業者に入れています。最初から変形サイズに切り抜くのや、銀テープ封入カスタムをする前提だったので見た目かなり変なデザインになっています。

名刺の両サイドだけを透明に保ちつつ、中心部だけ光らせたかったのでそれに合わせて裏面は切り抜いて変形サイズに加工。
更に銀テープの封入面が表か裏かにも合わせて、裏に銀テープを入れる場合は窓切り抜き。


位置決めをしておいてそのサイズに銀テープを貼り合わせ、表面と裏面で蓋する形に貼り合わせるとあら不思議。名刺の中に銀テープが入りました。

これでやりたかった全ての加工が済んで1枚の形になりました!
たくさん必要な場合?もちろん枚数分人力で手動で全力して頑張って制作です(´º﹃º`)
(1枚から作れる代わりに、量産はあまり想定されていないので十数枚ならともかく数十枚とかになるとそれだけ手を動かさないといけないので自分との戦いが始まります)


今回のは今までにやってなかったレベルに全部載せしたので最も手がかかる仕様になっていますが、普段気軽に作っている仕様はホログラム使ったキラ仕様か、クリアカード仕様にするのでもうちょっと工程が少ないです。

普通のカードの作例。今ロケテやってる某カードが出る音ゲーの



こんな部分キラ部分クリアで銀テープが入り裏面も変形デザインなんてやる気があったから作っただけで続編やる?って言われたら楽したいからやらないです。というかそこまでするか仕様で作ってるけどもう長いこと自分名刺交換行きませんし・・・

Q.何で名刺交換行かんのにこんな名刺作ってんねん
A.渡すものがないのは申し訳ないから、あと趣味(ここ重要)


趣味をやりすぎな例。全部カード作って、キャンプで直接サインをいただきに行く


ここでの作例は正直相当ぶっ飛んでいるというか、そこまでするかの範疇になるような作例ですので「なるほど、わからん」だと思います。
こんな作り方もあるんだよ程度の参考読み物で見ていただけたらと。

これ、昔から作例とかを直接説明する際に必ず一緒に説明してるんですが、こんな使い方が物凄く限られたお遊びのためにMDプリンタ買うのは全力でオススメしないのでやめといたほうがいいです。
今となってはインクリボンすらまともに入手できなくなっているので尚更。
(なお、カードバカの自分はメーカー生産終了時に絶対入手困難になるからと白色100本、金箔80本その他多数個人注文価格限界の30万円分発注して今も特に困ることなく使ってます)

てな感じで(変な)名刺作りの記事でした( ´w`)

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