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イヌの台詞19~オキシトシンの巻 ~

これは前回と同じ団地の中の公園の話です。二年前の春、桜の咲いていた頃のこと。いつものように球を投げて、ベリーに「取ってこい」ゲームをさせていた時に、ちょっとしたハプニングがありました。

「キャー~カワイイ~」という叫び声。突然の「乱入者集団」が現れたのです。制服を着た女子高生らしき6人のグループです。ベリーちゃんを囲んで、一斉に携帯で写真を撮っています。

そのうちの一人が声を上げました。
「ボール、投げさせてもらっていいですか!」
<エー!そりゃ無理!言うことを聞くはずないだろ!>

そう思ったものの、すでに球は妻から彼女の手に。そして投げられた黄色い球を―
何と!ベリーは一目散に追っかけているではないですか! 

球を咥えて戻ってくると―拍手と携帯の放列。 
「スゴーイ!」「カワイイ~!」

 これを何度も繰り返し、ベリーも嬉々として応じて……それは時間にして、ほんの5分か10分程度。 ベリーちゃんの見事なショウタイムだったのです。

済んだ後で思いましたよ。
 <ベリーのヤツ、よくやれたな。でも、これってスゴイこと じゃあないか>

アイツはまず、6人の「女子高生集団」を危険な人間ではないと判断し、その上で、自分がどうすれば、彼女たちに喜ばれるかということを瞬時に察したのですよ。

そしてアイツには、「タレント性」とも言える才能があって、皆に注目されて褒められることが、うれしかったのでしょう。

イヌはヒトと心を共有できる唯一の動物であるといわれていますね。イヌには人の感情を感知する能力があり、嬉しい時には、「オキシトシン」という幸福を感じるホルモンが生まれるようです。

それはヒトがイヌと遊んで楽しい時も同様でしょう。あの時、球を咥えて走るベリーと、ベリーを囲んで写真を撮る女子高生の双方に、きっと沢山の「オキシトシン」=「愛情ホルモン」が生まれていたのでしょうね。

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