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私は1人で登りたいんです。

1人でハイキングとか山に行くのが好きだ。山といっても体力がないので電車で行ける範囲で、1人でいける感じのところ。先日、久しぶりに山に行きたいと思いいつもより早く起きて9自前に家を出た。目的地は京都の大文字山。ぼっちハイクもアウトドアもスーパー初心者なので、オシャレに山の上でコーヒー沸かしたりとか、お湯を沸かしてちょっとしたランチ、なんてハイレベルなことはできない。コンビニでおにぎりとポカリとお茶を手に入れて電車に乗る。

数年前に買ってずっと眺め続けていたSAVVYのハイキングの号。そこに載っていた大文字山。気軽に登れて初心者向け、スタートもゴールも交通機関があるから、体力のない私にぴったりだ。蹴上の方から1人登り始める。私が頼りにしているSAVVYによると、蹴上の方から大文字のあたりまで2時間くらい。12時くらいにはつけるかな、と思っていたが、私のスピードではもう少しかかった。

途中は細い山道だったり、木が倒れていたりとアウトドア初心者には「ふぉぉ(・ω・;)」と思うには十分。アウトドアを楽しんでいる感じがとても出ていて良い。それにしれも、体力がないのでちょこっと歩いては立ち止まってキョロキョロしてふぅふぅ言って休憩する。1人だと自由なペースで歩ける。

のんびりのろのろと登って、13時くらいに広い道路に出た。マウンテンバイク登ってきている人もいるようだ。そんな道もあるんだな、と思いつつお腹が空いた。その場所は、丸太とか段差で座ってお昼を摂っている人も多く、私も真似っこして休憩しようと思った。座るのにちょうど良さそうな丸太があった。片側に私とおなじソロ活動中のおじさんがいたが、距離はしっかりとれそうだったので、おじさんと反対側の端っこに座って、おにぎりを食べることにした。

おにぎりをモソモソと食べていると、おじさんが話しかけてきた。「水筒を持ってきているがお茶いりますか?」優しいと思ったが、ペットボトルのお茶を持っていたので、丁重に断りまたモソモソととおにぎりを再開する。その後もおじさんは間をあけつつ話しかけてくる。よく登るんですか?どこに向かうんですか?などなど。めんどくさいなぁと思いつつ、こういう交流もアウトドアか、と会話した。おじさんは私と逆の方から登ってきた為、すでに頂上を越えてきたそうだ。これから目指す先を通ってきたと聞き、ついつい「頂上ってあの広い道の方ですか?」と質問してしまった。休憩していたところは目の前に広い道路が整備されていたので、その道沿いに行けばいいのかな、とアウトドア初心者らしい素朴なことを聞いた。今考えれば、その質問で私は「なんもしらんへっぽこ」と認定されたのであろう。あの道路は林道である。林業の人が車とかで入ってくる為のもので、あの先には頂上はない。頂上は他の登山を楽しむ人たちが進む細い山道だと、おじさんは教えてくれた。ほぉ、そうなのか、賢くなったぜ(・ω・)おじさんは突然、「案内しましょうか?」と言ってきた。私は「歩くの遅いんで大丈夫です」と丁重に断った。しばらく黙ったり喋ったりが続く。二個目のおにぎりを食べ終わった私はおじさんにお礼を言い、ソロ活動を再開せんと立ち上がった。すると、おじさんも立ち上がり「一緒に行きましょう」と言ってきた。

え、なんで(・ω・)?

このおにぎりタイムにより、私のコミュニケーション力は使い果たした。あとは1人でとぼとぼと歩きたい。もう一度「本当に遅いので大丈夫です」とやんわり断ったが、おじさんには通じず「気にしません、行きましょう」と一緒に来る気、満々だ。

いやだ。いやだがどうやったらおじさんが諦めるのか、コミュニケーション力を使い果たした私の頭では何も出てこない。一生懸命記憶を呼び起こし、雑誌に載っていた経路を思い出す。確かこの先はそんなに時間がかからなかったはずだ。大文字のところまで20分くらい?そこからゴールの銀閣寺まで25分くらい?それくらいなら頑張れるか…。仕方なくおじさんと頂上を目指して歩き始めた。ずっと喋ってる訳ではないが、よく知らないおじさんと山道を歩くのは緊張する。もはや帰りたいという気持ちしかない。ちょこちょこと会話しながら登ったり降りたりするのはしんどい。

しばらく登ると頂上に出た。京都市内が見渡せるとても良い景色だ。頂上には、お昼の休憩をしている人も多くいた。頂上でぼんやりしたい気持ちもあったが、おじさんの解説が止まらない。あそこに見えるのは二条城だとかあっちのほうは大阪まで見えるとか。非常に申し訳ないが

どーーーーーっでもいい。

頂上から見えるあれがどーだのこれがどーだのどーーーーーーっでもいい。景色がキレイとかもちろん楽しくもあるが、おじさんの解説を聞きたい訳じゃない。景色を見てぼーーーんやりしたいだけなのだ。放っておいて欲しい。おじさんの家がどのあたりだとかもどーーーーーーーーっでもいい、聞きたくない知りたくない。

とはいえ中途半端に外面が良い私は「へぇ」と適当に相槌を打ってしまう。微妙な空気感が苦手で会話をふってしまう。こういうのがよくないのだ。でも、街中で声かけられたらガン無視して逃げ切るが、山でどうやって逃げればいいのかわからない。降り口までがんばるしかない。

頂上もそこそこに、大文字のところへ向かう。

大文字のところでもまた解説が始まる。どーーーーーーーーーっでもいい。しかし、ここまでたらゴールだってもうすぐだ。耐えろ私。おじさんは大文字の中を降りる道と普通の道とどっちがいいかと聞いて来る。どっちでもいいけど大文字の中を通ってみたい気がする。おじさんに大文字の方を通りたいと伝えて、階段のようになる山肌をゆっくり降りる。おじさんは降りながら「ここを通れると思わなかったでしょう」と言ってくる。確かに知らなかったが、途中でお弁当食べてる人とかいるから、1人で来てもうろちょろしてたと思う。

そこから20分か30分くらいだろうか。道が山道から整った道になってきた。いよいよゴールが近い。おじさんとの別れももうすぐだ。

道がゆるやかになってきたところからおじさんのおしゃべりは増えていく。近隣の山のこととか、おじさんは週1で近くの山に登っているとか。本当に申し訳ないがいらない情報が増えていく。途中で住んでるところや名前などをお互いにはなしたが、ごめんね、全部嘘だ。なんか嫌だったから全部嘘だ。私は宇治には住んでいない。伝えた苗字も職場にいる人のよくある苗字だ。ごめんね、おじさん、そして職場の加藤さん。だってなんか嫌だったんだもん。

しばらくしてようやく銀閣寺の前に出た。本当はちょこっと銀閣寺を見て行きたかったが、いち早くおじさんと別れたい。「もう少し時間ありますか?」と問うてくるおじさんに「友達と京都駅で4時に待ち合わせてる」と嘘をつき、公共交通機関を探す。地下鉄はなかったはずだからバスだ。バス停を見つけたところでおじさんが「良かったらLINEを交換しませんか」と言ってくる。道中なんどもスマホを出した。持って来ていないは通用しない。いやだ。嫌だと言えばいいのに、なんか言いにくい。仕方なく交換だけして連絡来ても放置すればいいか、とひどいことを考える。中途半端に外面が良い私はスマホを出しLINEのQRコードを表示した。すると、おじさんのアプリかスマホの調子が悪いとかでなかなか立ち上がらない。LINE交換したら、さっき嘘の名前伝えたのバレるな、一生立ち上がるな、とこれまたひどいことを考えているとものすごくちょうど良いタイミングで京都駅のバスが来た!神様!助かった!おじさんのスマホが立ち上がらないうちに「バス来たので!すみません!またどこかでお会いしたら〜」と1ミリも望んでいないこと別れを告げてそそくさとバスに乗り込んだ。おじさんは「はい、ないと思いますけど」と言って別れてくれた。さようなら、おじさん。

バスに乗って時間調整か2分くらい出発しなかったので、おじさんが乗って来たらどうしようかと思った。しかし、おじさんは銀閣寺の方に向かって歩いて行き、無事バスは出発した。言っちゃ悪いが心から逃げ切ったと喜んでしまった。

山とかアウトドアで仲間を見つけたい人にはいいのかもしれないが、私は山登りやハイキングにそんなもの求めてない。1gも求めていない。べつに人と喋りたくないとかではない。山道で知らない人と「こんにちは〜」とか道を譲り合って「ありがとうございます」とか言葉を交わすのは存外楽しい。気分がほわほわする。しかし、私の目的は1人で黙々と歩いたりキョロキョロしたり人に気を使わず自分のペースで動くことだ。それが楽しい。だからおじさんには悪いが正直言って迷惑だった。山中で2回トイレタイムをに取っていたのも、なんか嫌だった(登山中ってそんなにトイレしたくなるものなんです?年齢問題?)

どれだけ嫌だったかというとわざわざこんなに長いNoteにするほど嫌だったし、帰り道ではずっともっとちゃんと「いらない」と伝わる断り文句を考え続けたくらいには本当に嫌だった。なんか断りづらいからと「歩くの遅いんで」って言ったのが良くなかった。万が一、同じようなことがあったらきちんと「1人で歩きたいので結構です」と力強く言おう、そうだそうだ。ちゃんと断る!断固として断る!

でも、怪我したりとかなんかあった時には大きい声で助けを求めるから、助けて欲しい。よろしくお願いします。

頂いたお金を使った暁には、noteで何に使わせていただいたかご報告しますね!