5/24 遠征日記
SF映画に登場する所謂「ワープ」は実際に出来るのかどうかと言う議論は今のところ決着していないらしい。
そもそも宇宙がどんな形なのかわかっていないことが原因だそうで、例えばそこが広い広い円形の空間であるなら不可能だし、複雑に入り組んだ迷路のような、通路のような構造を持つ形ならある意味で可能である、と言う話だった気がする。
この議論を繰り広げる学者・科学者たちに、僕は教てやりたい。先に述べた例の、後者に該当する場所が日本にある。
有史以来数えきれない人間を迷い込ませ消息不明に追いやった地、そう、池袋駅である。
池袋Adm
久しぶりに遠征した。関東圏への遠征は3月の金属バットナイト以来である。
一時期は月に2回は東京に来ていたことを考えれば本当に本当に久しぶりに思えてくる。
生活環境が変わったり、仕事が忙しくなったりでどうしても遠征を控えざるを得なかった。今回は我らがDr.Smokin’Frog と、昨年胸を打たれた村上達郎さんが出るとの事でいろいろとやりくりを頑張って遠征にこぎつけた次第である。
思えば社会人になってからよく遠征するようになった。学生時代の方がなかなか(別の遊びに忙しくて)時間を作れず、そもそもそんなにお金もなかったために遠征なんてブルジョワなこと出来なかった。
最初の遠征ってなんだったかなぁ。たぶんロッキンだなぁ。アレからだなぁ本格的に人生の雲行きが怪しくなったの。お父さんお母さん、僕にヤコバや鈍行による長時間、長距離移動への耐性をありがとう。身長も無事に170㎝に届きそうだよ。あと最近花粉への耐性も獲得したっぽいよ。花粉って言っといた方が仕事サボりやすいから花粉キツいっすわ〜言うてるけど。
閑話休題
遠征を覚えて幾数年。なんだかんだ社会人を続けて気がつけば6年目。雀の涙ほどとは言えじわじわ収入も増えまして、ときには遠征に新幹線や飛行機なんて使っちゃったりしてね。あたしも偉くなったもんですよ。
今回の遠征ではそろそろクルーザーなんて使っちゃおうかしら。それともヘリコプターでもチャーターしちゃおうかしら。ヘリコプターをチャーターしちゃーたー、とか言うたりしてね。えっ、なに、竹馬?えっと、ラリってらっしゃる?いいのいいのこれ読むツイッタしてる暇人なんてラリってるようなもんですからね。わかってますよ。
言うとりますけども。やっぱりいつまでも、どれだけ歳を重ねても純粋だったあの頃って忘れたくないですよね。皆さんにもあるんじゃないですか。家の冷蔵庫からちくわ盗んでザリガニ釣りませんでした?庭に池作って入れたザリガニが脱走して洗濯物干しに来たオカンが腰抜かしたことありませんでした?
裏の池から釣って来たフナを金魚鉢に入れたら全滅したことありません?カブトエビおんなじバケツの中に放置したら翌日共食いしてたんがトラウマですよね?死んだカブトエビを「エビやし」言うて仏壇に供えませんでした?そしてその後じじばばに半殺しにされませんでした?この話ウケると思って中学校でして変な空気になりましたよね?ね?
そう、我々は大人になるなかでようやく童心をそれとして自覚する数奇な生き物なんですよ。初心忘れるべからずに温故知新。そうして我々は成長してゆくわけですね。うんうん。
てなわけで夜行バスで行きました。
ヤコバですよヤコバ。我々の強い味方。皆さんもお世話になっていることでしょう。あの嫌味なくらい棺にぴったりの形した長方形の乗り物。
なんせ安い!メリット、以上。
あとはマジでデメリットしかない。疲れる、体痛い、長い。目的地着くん早すぎる。今朝なんて東京着いたん6時でっせ。6時て。酒カスが寝る時間やん。何させんねん朝の6時から東京で。
ラーメンを食べました。
ぶれっくふぁすとですぶれっくふぁすと。朝飯て英語でBreakfast って言うでしょ。Blake(壊す)にfast(最初に)で朝飯。そうつまり朝一に身体壊すんが朝メシ言うわけですわ。身体壊そうと思ったらラーメンでしょ。ラーメンは薬膳ですからね。話の筋が合ってない?当たり前やろ身体壊してんねんこっちはしばくぞ。
腹ごしらえも済んだので僕は早々に今回の目的地である池袋に向かいました。
池袋!もはや懐かしいまである。田舎っぺの僕は最初この街にそれはもう翻弄されたもんです。なんせ駅がややこしい。デカい。出入口多すぎる。どうやら東京の人は目的地が東西南北そこかしこにあるらしい。
僕と池袋との因縁はそれはもう深い。案内板がね、狂ってるんですよ。北口(南)とか北口(西)とか書いてるんですよ。いや北なん南なんどっちなんて。ライブハウスは北口が最寄りとしか書いてないんでおいおい田舎モンに厳しすぎるぜと怒り狂ったもんです。
きっと冒頭に述べたワープの話に日夜頭を悩ませている学者連中も池袋に来ればたちまち問題解決に至るでしょう知らんけど。
そう言えば池袋にて東京を感じる一幕があった。
ホームから出口に向かう途中でおば…お姉さん3人組がこんな話をしていた。
「凄い髪切ったよね!」
「そうなの!もう嫌になる事があって!」
「どうしたの〜!」
「あとでじっくり聞いて〜!」
みたいな。めちゃくちゃ東京を感じた。
大阪ならこうはならん。大阪なら、
「めっちゃ髪切ってるやん」
「殺したいヤツおんねん」
となる。知らんけど。
はてさて池袋着いてネカフェで身支度も終えまして暇。やる事がない。なぁなぁリリィ池袋で〜やりたいことがなぁ〜い。
そんなときに頼れるのがTwitter。Twitterは一生の友達。アタクシが数年かけて構築したフォロワーデッキのなかから最高にクレイジーな相棒が助けに来てくれました。
カッケェェ〜〜〜〜。さすが世界30の国と地域で指名手配されているアウトローなだけある。朝ラーメンを食ったこの俺に誰も予想しなかったであろうラーメンを勧めてきた。クレイジーだ。上等だよやってやるよ。
そんなわけでやって参りました。東京は板橋にございますラーメン鷹の目さんです。
僕もなゆたさんも生粋の港区女子なのでやっぱりランチは拘りたいんですよね。インスタ映えをガンガン狙って行こう。
なんてことや…富士山は板橋にあったんか…
二郎系ラーメンなんて滅多に食べないのでちょっとドキドキしちゃう。何〜〜このもやしの量〜〜!あとチャーシューの存在感エグ〜い!スープにめっちゃ脂浮いてる〜〜〜!バイト先で水道の掃除した後のゴミ箱こんな感
僕となゆたさんは生粋の港区女子である(2回目)
食べ終わったらすぐさま「美味しかった〜🥰今度は一緒に行こうね〜🥰」って連絡をいれる。港区女子なんで、知らんけど。ンナこたぁどうでも良いんだよ!飯だ飯!二郎二郎!!
ここで僕はある事に気がついた。今日僕はラーメンを食べに東京まではるばるやって来たのではない。ライブを観にきたのだ。
そして僕は今、白いバンTを着ている。
目の前にラーメンが登場し、箸とレンゲを構え、まさに今喰らい付こうとしたときに刹那の逡巡があった。
___やられた。
そう、僕はまんまとなゆたさんの罠に掛かったのである。
うず高くそびえ立つもやしの塔、脂と分離したスープ。このラーメンを誠心誠意楽しもうとするならばこの丼の中身をドラム式洗濯機の如く掻き回す必要がある。
仮にそこを潜り抜けたとしても、ラーメンは啜る以外に食する術がなく、とどのつまり汁を服に飛ばさずに完食する事は不可能と言える。
万事休す。なゆたさんは最初から港区女子みたいな風を装ってその実歪みきった偏見から来る理由なき憎悪をもって我々港区女子を貶めんとする筋金入りのインターネットモンスター、全世界45の国と地域から指名手配されるアウトローだったのだ…!!
冗談はさておいてこのラーメンの完成度の高さたるや。見た目の二郎然とした風体にふさわしい鋭利な舌触りに重厚な麺。それでいて全くしつこさを感じさせないスープ。箸休めにも全体の調整役としても手腕が光るもやし。三位一体とはこの事、キリスト教における父と子と精霊とはすなわち麺、スープ、もやしである。実際聖書にもそう書いてある。※
ギアを上げるにも良し、クライマックスを飾るにも良し、攻防一体のチャーシュー。そして店長が間違えて投入してしまったニンニク(抜いてって言った)。
これら全てのうちどれか1つでも欠けていたらこの最高に素敵なひと時はなかっただろう。
つい考えてしまう。僕たちの人生を振り返るといったいどれだけの欠落があるのか、そこから誰が、何がすり落ちて行ったのだろうか。そんな事を考えてしまう時間だった。ごちそうさまでした。あ、あと普通に紙エプロンありました。
※書いてません。
腹がいっぱいになったところで次なる目的はいよいよライブである。板橋はマジで何して良いかわからんかったからとっとと後にしました。
今回のハコは歴史と伝統と方々から「どうにかしろ」と言われているトイレと最近設置されて速攻でぶっ壊れた柵でお馴染みのハコ、池袋Admである。
我らがカエルちゃんが最近それはもう大変お世話になっている。Admのイベント梅雨将軍にもお呼ばれしましたね!この調子でブクロックもよろしくお願いします!カエルをZeppで観たい!!
もちろんのこと本日のお目当てはカエルちゃんなのだが、もう1人僕がこの日を心待ちにしていた理由の人がいる。村上達郎さんである。
達郎さんを知ったのは去年の3月のことだ。その話は前にしたので端折るが、僕はあのときこの人のステージに胸を打たれ、以降一度もライブを観ていない。
機会はあった。達郎さんは幾度となく関西に来てくれている。単に、僕にはこの人のステージを観る勇気がなかったのだ。
達郎さんを僕の言葉で端的に表すとしたら「バンド活動の負の側面の化身」である。重い。なかなか陽の目を見ない事への不満、不安。相反しながらも歌うことを辞められない葛藤。
そう言った感情への解像度や詩に落とし込む筆力たるや。僕が知るアーティストの中では群を抜いている。
活動を続けていて、辛くない訳ないだろうに。それでも自らを“スーパーシンガーソングライター"と呼び、ステージに立つ。どこか足掻くようなそのパフォーマンスがえらく刺さった。
刺さりすぎていい歳こいてちょっと病んだ。自分はバンドマンでもなんでもないのに。
達郎さんの曲は、聴いているこちら側がもう良いじゃないですか、と言いたくなるくらいにバンド活動の負の側面に向き合っている。
そうして出来上がった楽曲の数々は極めて純度が高く、まるで水のように形を変えて聴く者たちそれぞれの器に満ちる。
だから、聴いてて堪えるし、キツいし、それはもうめちゃくちゃにかっこいい。
今日のステージで、達郎さんは言っていた。
例によってうろ覚えはご愛嬌願いたい。
「音楽が楽しいと言うのはちょっと違う。(中略)これは僕にとって、気持ちを伝える手段。その最も美しい形が音楽で、それが今日ここにいる人達に届いていることが、楽しい」
僕は、1年振りに観る達郎さんのライブを、去年よりもずっとずっと前向きに捉えることが出来た。
この人は、これしかないと思うことを精一杯しているのだ。誰にでも出来ることを、誰にも出来ないくらいに一生懸命しているのだ。そうであるが故に、スーパーシンガーソングライター村上達郎のライブはかっこいい。
本日のトリを飾る我らがDr.Smokin’Frog の音を浴びる中で、彼らと達郎さんは対極にいるなと、対極だと良いなと思った。バンド活動のすごくすごく辛い一面と、なにものにも変え難い楽しさと。
本当に良い顔でライブをする。フロアなんて置き去りにして、自分達の楽しい、かっこいいをどこまでも貫いて欲しい。こっちは勝手に、良い気分でいるから。
この日、Drがトリで良かったなと思う。
久しぶりのヤコバによる東京遠征。わかっていたがクタクタである。ヲタクと言う種の中には、ヤコバで地元に帰ってそのまま出社する狂った個体もいるらしい。死ぬぞ。
クタクタだしあちこち痛いし、だんだん仕事も休めなくなるだろうしで、もうあと何年こんなマネが出来るかわからないが、やっぱり遠征はこうでないとなって思う。
そんなわけで、また迷子になりに来ますよ東京。
来週だわ。
〜完〜
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