2023/09/19


 
 マンションの共有スペースに出された段ボール詰めにされた私の荷物には、あなたらしさがよく出ていたと思う。段ボールを開ける度にほんの少しだったあなたとの生活を見せられているようだった。私しか飲まなかった珈琲まで入れてくれなくたっていいのに。交換日記やアルバムの写真も捨ててくれてよかったのに。二人で始めたこの結婚を、先に一人で終わらせたのはお前だと言われているような気がした。私以上に幸せな女はいないと心から思っていた日々が確かにあった。荷物を積んだ2トントラックは首都高を走る。荷台に積まれた私のワンピースの裾がはみ出し、風に煽られたなびいては大きな波動を率いて扇動していく。その様子は美しい。私以上に幸せな女はいないと確かに思っていた女を、確かにお前はこの世で最も幸せな女だったよと、そう思いながら、その女と2トントラックはビルにその速度のまま突っ込んで行くように走っていく。その様子は美しい。床で泣いていた私は、頬の産毛が逆立つほどの速度で暗い穴に落ちていった。その様子は美しい。彼は私のこの才能を何度だって見つけてくれた人でした。綴られるにはあまりにも美しい日々でした。てへりんこ、この度離婚をすることになりました。てへりんこが28歳になったばかり、娘が1歳になる頃のこと。その様子は美しく、美しい。

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