年末のご挨拶


 てへりんこ、昨晩は忘年会。離婚届出した日の夜中、実家の庭に生えてる林檎の木によじ登って泣いたこととか絶対忘られないけどね。あの娘が初めて覚えた言葉が"やだ"なこととか、職場の非常口から保育園のお散歩カートに乗せられた娘の後ろ姿が見えることとか、諸々支払いの引き落としの音が聞こえる度にあの娘と一緒に浸かった湯船から二度と上がれない気もしたよね、そうゆうの、それらの全て、年を越しても絶対に忘れられるわけじゃないけどね。今日明日だけを娘に見せてあげたいわけじゃない。遠いようで近い未来、あの子がもし運命に敗れることがあった時、あの子が私の元に帰って来れるように、そうゆう抱きしめ方をしてあげたいから。いつからか全くもって身の入らなくなった欠勤の連絡。もう最近はあの娘を膝の上に乗せながら、携帯は耳と肩の間に挟み、右手ではあの娘の髪を撫でている。ジャンキーと鶴屋町の空くのを待って入ったラブホテル。携帯を耳と肩の間にやっぱり挟みながら、履いてたストッキングにサイドテーブルの下の白い粉末を付着させながら。ママに電話。『伊勢丹に愛を買いに行ったはずが只今現在横浜にいます』てへりんこはおかあさんといっしょを毎朝観ている。この珈琲飲んだら、ピアノで弾いてあげるよまた。2台のグランドピアノ。これ売ったらどんぐらい金になんのかな。あの娘の夜泣きは超メガトン級。足先から徐々に打ち寄せる波が濡らしていく。そして、気付いたら水位は顎にまで達していて、そんな孤独の中、そして、てへりんこがたまに泣く。自分の子供相手に、床にへたり込んで泣くわけ。あの娘、それ見てもっと泣く。それ見て、てへりんこまた立ち上がるのが先か、朝が来るのが先か。あの娘のつむじから匂うむせ返るほどの、あの娘の紛れもないこの実存を朝の光は照らし、教えてくれます。愛してる。職場のババアに聞かれたよ。『中卒?』職場のババアに言われたよ。『次は男の子が欲しいね』まだ20代のてへりんこ、まだおっぱいが張っていて嬉しい。酔っ払うとこめかみを叩いて意識を取り戻す、てへりんこの、あの癖が、まだ出てくる、そんな自分が好き。ちゃんと友達との長電話をするときはなんか食いながら、クッションに埋もれて。あの娘が寝静まったあとのリビング、電話をする左耳は熱くなり意味もなくグレープフルーツジュースをガラス棚から出したグラスで飲んだりしたりして。お馬鹿さんなのも相変わらず、ご健在。でも確かに違うのは、確かにあったてへりんこの地獄。その上にある、今、今夜であるということで。あの娘と元夫との面会交流の為、てへりんこと彼も月に2度ほど顔を合わすけど、てへりんこの中に確かに彼は、てへりんこのど真ん中でものすごい深さまで彼は占めていてくれました。今頃、この年末、彼はどこかのアジアの滝の近くで大麻ブリブリ、お尻フリフリ。喉の渇きは滝下で、空仰ぐ。寒さを凌ぐ振りをして、腕を組み猫背の姿勢でいつもの駐車場であの娘が帰ってくるのを待つけれど、早く暖かくなれば良いなと思う。てへりんこ以外の、全ての人の為に。だから、今年のてへりんこ、普通にまじで感謝やばい。地獄の黙示録。てへりんこのハノイ。Grabで呼んだタクシーがなぜか3台来る。てへりんこ、ハノイでお姫様体験。運転手は三者三様、しかし全員もれなくてへりんこにバチギレ。選べ。選ぶか金払え。やばい。異国のてへりんこは金の払い方をいつまでも覚えることがない。てへりんこはゆっくり1,2,3 スリーカウント。この3秒で浮かんだ人達のためにこの地獄から這い上がる、そう決めて、ノーブラのまま着てた背中の開いたワンピースの裾をずり上げて、結婚式場から攫われる花嫁のように、爆竹がぶっ放され続けている3本の幹線道路が交わる交差点までそのまま脇目を振らずにバイクの波に投身。崖から身を投げた儚きオデットの様。本当の瞬間はいつも死ぬほど怖いものだから。あの日から今日まで。今年のてへりんこはまじ感謝やばいのよ、各位。2024年。肩で風切って行き、生く。今年の誕生日は台風だったよね。だから、そんな時、皆んなが居てくれたら嬉しい。そう思って、この年末、てへりんこは此処にいます。

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