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I feel the another world at favorite scene

別世界を眺める。旅先で、いつもの場所で。

 私の近ごろの業務は専ら額装の仕事です。
主なることは 作品を見やすくするための額装プランを立てることから、発注、完成まで。

 ここでは何でも "作品" "額装品" と呼称しますが、ふつうより気張って言わないです。小さい子の完成した絵も私は作品と呼んでいます。もちろん美術館のそれも作品と呼びます。あまり優劣だとかそういった感覚はわざに使わず、作品と思えば作品と呼びます。
 なので私にとってArtは、ごく身近なもので場合によって会話よりも深く対話のできる、人のコミュニケーションです。時代や空間もまたぐことができます。

 額装についての話を少しずつ綴っています。

 実在の空間において、作品は既に空間の一部分になる。という当然の事実があります。作品の世界からみれば、真っ先に作品の外になる空間が額縁なので、額は作品の世界観へ影響しやすいパートです。

 私は気をつけて事柄のバランスを整理していきます。人に依るところですが、額は重要である。またはそうではないケースもあります。
 私はさいしょに構図から注目します。支持体そのもののサイズと、厚み薄さと、絵具の重量感なども含め捉えていきます。
 飾られる空間の情報と、何の経緯や目的があって飾るのか会話の中から教えてもらい、そのシーンを描きます。それから私は額のテイスト、デザイン、作品と呼吸の合う色味質感というように、目の前の作品を近くに感じれるようになっていきます。近づいて離れて確かめます。決定の基準は作品が引立つこととします。

 額装しようと思い立つ動機は人それぞれにどんな事情があるでしょうか。私は思い返してみています。
 十色の作品、状況の額装現場に立ち会い続けるうちに「額縁は作品としての世界観を続ける必要性は最優先事項ではない」という感覚を持つようになってきました。額装を選択する上で優先するのは 作品を見やすくすることで、それは作品と額と外景の事情をうまくバランスを取り整理することにつなげています。

 この空間に「額をかけたいな」かもしれませんし、作品を眺めたくなったのかもしれません。眺める気分は人それぞれで事情は移ろいます。
 あるいは作品の、制作されたままの姿を見つめている時に、「とりあえず飾って見てみたい」とか。
 展示会への出展の機会にだったり、
「こんな名作は保存したい」という感覚に、出会ったときとか。誰か大切な方へと作品を贈りたいとき。それがいつかの贈りものとして今は保存し、譲り渡すための。そして、受け取った時に。
 はたまたもう既に現状は額に収められているけども、あらためて鑑賞したくなった。と、しつらえ直したい気になったとき。
 そうやって額装へとアプローチするという段になれば、その方法もまた多様となっていくようになっていて‥‥たとえば、
 作品より額にお金はかけたくない。
 あるいはじっくりいい状態にしたくて、絵に華や迫力を添えたい。ビンテージ感とか、額は無いようなそのものの存在感のままとかイメージがある。
 ふつうな、感じがいい。など、トイロにイメージを持って湧き出ています。

 この辺りで、私はあなたや作品と日々対面しています。
 困難なときもあれど、とてもしあわせな職業です。

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