意匠法における「形態」・「形状等」という表現について

令和元年の意匠法改正および意匠審査基準の改訂にともなって、意匠の答案に用いていた「形態」という表現を修正する必要性が生じました。

この記事では修正点の概要を説明します。

改訂前の意匠 審査基準では、物品の「形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合」(2条1項)について「形態」という用語があてられていました。

令和元年の意匠法改正によって、「形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合」は、「形状等」(2条1項かっこ書)であると法定されたため、改訂後の意匠審査基準でも「形態」という用語は「形状等」に置き換わっています。
(ただし、改正前の法律に基づいて判断された審決や判決で「形態」という用語が用いられていた箇所については変更はありません)

今後も判決文では「形態」の用語が従前通り用いられる可能性はあるものの、公表する答案例では審査基準にならって「形態」という用語は「形状等」へ一律に変更することにしました。

ここで、改正後の意匠法の条文をよく読むと、意匠法における保護対象のうち、物品に係る意匠建築物の意匠とについては、「形状等」という用語が用いられているのに対し、画像の意匠については、「形状等」という用語は用いられていません。

この点について例示するために、代表的な条文を2つ引用します。意匠法2条1項と3条2項です。

2条1項:
この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。次条2項、37条2項、38条7号及び8号、44条の3第2項6号並びに55条2項6号を除き、以下同じ。)であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
3条2項:
意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、同項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。

ということで、条文の規定にのっとった厳密な表現としては、

「物品の形状等」
「建築物の形状等」

とは言えても、

「画像の形状等」

とは言えないことがうかがえます。

しかし、改訂後の審査基準では、画像の視覚的要素を「形状等」と指称すると定義づけられています。

このような方針に基づいて、個別の審査基準の説明においても、

「物品等の形状等」(物品等=物品、建築物または画像)

という表現が用いられています。

また、同時期に公表された意匠審査便覧でも、34.01において、

「物品、建築物または画像の形状等」

との記載があります。

以上の理由により、画像の意匠についても、物品に係る意匠や建築物の意匠と同様に、「画像の形状等」という表現を用いても間違いではありません。

「形態」という表現は、判決文においては今後も用いられる可能性があるものの、意匠の論文式試験では「形態」という表現は用いずに、一律に「形状等」としてしまったほうがよいと考えています。

じゃあ「形態」という表現を用いたら減点されるだろうかーこの点については、「形態」と書いても致命的な減点にはならないと予想しています。

ただし、「建築物の形態」や「画像の形態」というコロケーション(組み合わせ)については違和感が生じかねないので、建築物の意匠や画像の意匠について言及する際には「形状等」という表現を用いたほうが無難です。

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