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#33. 知財業界における教育〜知財部の教育〜

 去年の年始以来のポストになります。ご無沙汰しています。記事をアウトプットできていない期間に様々な出来事があったのですが、今日はそこには触れず、ドクガク先生の弁理士の日を盛り上げる企画に沿った内容にいたします。

1.新人教育

 まず、教育する相手として真っ先に思い付くのは定期配属の新人です。規模が大きい知財部をもつ会社だと、会社の新人共通プログラムの他に知財部の研修プログラムが用意されていると思います。
 その後は、多くの企業がOJTが中心となると思いますが、メンターとかブラザーとか呼ばれる人の指導を受けることになると思います。もちろん、いわゆるメンターガチャも存在します。一年乃至は三年くらい一人前になるまで「新人」扱いをして、教育を受けることになると思います。
 社内教育で社内の技術や独自のやり方を学び、日本知的財産協会(JIPA)の研修の様々な研修プログラムを受けて法制度などジェネラルな知識をつけて行くのが王道かと思います。JIPAの研修は本当にいろんなプログラムが充実しており、JIPAに参加している企業は多くの人に受講させていると思います。たしかJIPAは1000社くらい加入しているはずですし。
 キャリアが10年くらいになればJIPAの専門委員会にも参加して、その深みをさらに極めて行きつつ他社とのコネクションを作る。これもいいと思います。私は弁理士会の委員会活動には参加したことないですが、JIPAの専門委員会は、弁理士会の委員会活動と位置付けは近いのではないかと思っています。JIPAの専門委員会についてTwitterとかで凄さ・面白さをツイートする人とかいない(当たり前か)ですけど、あれ凄いと思いますよ。
 このように規模が大きい知財部、新人教育に多くの時間と労力をかけていると思います。だから、コストをかけて育てた人が3年とか5年以内に退職してしまうと、会社として痛手になります。大きな企業ですらそんな感覚なのですから、特許事務所がこの手の問題で悩むのはよーく理解できます。
 本当は自社の新人知財に行っている研修プログラムの内容なんて書いた方がよいのかもしれませんが、そこは匿名アカウントのためここには書けません。必要があれば飲み会で聞いてください。

2.中途採用/異動者教育

 私がよく知るとある企業ですと、中途採用や他部門から異動してくる人物を受け入れるときの教育がきちんとできていない印象です。経験者は即戦力なので、今回の話題の対象外ですが、知財未経験の若い人は新人と同じプログラムに乗せてしまいます。そっちの方が自社のやり方に早くなじんでくれるからだと思います。しかし、その一方で同じプログラムの乗らない方もいます。私は30代半ばの異動でしたが、その中間のような扱いでした。
 今日はここでネタを広げようと思い、久しぶりに筆をとったのですが、書き始めたら身バレしそうなものばかり内容になり、さらには自分の日ごろの愚痴につながりそうになりましたので、ここでこのネタもやめることにします。

3.開発教育

 ということで、知財部による開発教育ネタを本日のネタにします。よい発明を提案してくれる開発の人間を探す、というのが多くの企業知財のミッションだと思いますが、そのレベル感は会社によって様々だとは思いますが。
 私が開発の人たちに一番つけてほしい能力は、特許公報を読んでクレーム解釈できること、です。
 いきなり高レベルな話から入ったなと思われた方もいると思います。確かにそうかもしれません。いくつか段階があるかと思いますが、まずは「クレームを狭く解釈しない」ことを徹底してもらうのがいいと思います。
 開発の人たちは自分たちの技術が新しい、独自な技術だと思って仕事をしている方が多いのか、だいたいの人がクレームの意味を狭く解釈してしまいます。明細書の実施例にこう書いてあった、サブクレームにこう書いてあった、図面がこうだった、と言ってしまいがちです。メインクレームの文言からどういう技術まで含まれうるかということを読み取る力が必要なのですが、頭の中でサブクレームや特定の実施形態に発明を限定してしまうものなのです。ここの考え方を変えていかないと、他社特許のクリアランスを検討する際に狭く解釈してミスってしまうし、自分が創出した発明の新規性の正しさも、知財に理解してもらうことができなくなってしまいます。
 この能力は明細書を書く方も同じく必要な能力かもしれませんね、先行技術との対比がきちんとできないということになってしまいますし。そういう意味では発案・出願・権利化にかかわる人なら皆、一番重要な能力かもしれませんね。

 逆に開発の人たちに私が簡単に教えないことは「進歩性」です。これはあくまで自分のポリシーですが、進歩性は知財が考えるものだと思っています。まず、進歩性は権利化業務をして、審査官とのやりとりを経験しないと肌感覚が身につかないと思っています。これは審査基準を読んだり、セミナーを受けるだけで身につくものじゃないです。また、開発は開発で進歩性を難しく考えすぎて、開発内でアイデアの潰しあいをしているケースもあると思います。だから進歩性は原則、開発に考えさせません。
 発明者の相談で、「これ進歩性ありません」と知財が言うのは、「私はこれでは権利化できません」と言っているのと同じです。裏を返すと、スキルが高い知財ほど進歩性の敷居は低いのです。出願数を絞らないといけない事情がない限り、社内審査官はゆる~い審査基準で発明者の発明を認めないといけないと私は思っています。
 とはいえ、上級レベルの発明者には阻害要因とか説明するケースもあることはあります。中級だと、近い先行技術2件と課題・効果に違いがありませんか?といった形で聞くケースもあります。効果が同じだけど、作用が違うと熱心に説明される開発の方もいますがね・・・

 と、書いてはみたけど自分は実践できているかいないか・・・どっちだろうな。。。
 明日から発明者の相談は片っ端から出願までもっていきますかねw
 まぁ、こんな記事でも一人でも多くに人が読むことで、一人でも多くの人が知財に興味を持ってくれればと思います。また、定期的に何かポストする生活にしますかのう

記事を読んでいただきありがとうございました。 支援をいただければ、また新しい記事を書くモチベーションに繋がります。よろしくお願いします。