北村晴男先生たちの活動に対する違和感

行列のできる法律相談所で有名な北村晴男弁護士とするグループが、東京弁護士会の臨時総会での死刑廃止決議するのはおかしいとして委任状を集める活動をしています。しかし、その理由付けは、かなりおかしいものです。

この問題は、死刑制度の当否が問われているのではないと思う。一部の以降で、思想統一するような決議をするのが問題だわ〜。

とありますが、弁護士会が決議をしても、その弁護士会に所属する弁護士は、決議と異なる見解を述べ続けることができるし、決議に賛同するような思想改造セミナーを受けさせられることもありません。日弁連や各単位会はこれまでも様々な決議をしてきましたが、「思想統一」するような措置が講じられたことは一度もありません。

死刑廃止運動を見るだけで傷つく遺族もいるそうです。私は、人を傷つける運動に参加したくないな・・・でも強制参加・・・

とありますが、死刑廃止運動を見るだけで傷つく遺族が本当にいるのか不明ですし、仮にいたとして、自分の意に沿わない立法請願運動を見るだけで傷つくような不寛容な人への配慮など不要です。こんなことを言い始めると、具体的な刑事裁判で、被告人の無罪を主張したり、死刑回避を求めたりする弁護活動を行うことすら、当該事件の被害者遺族を傷つけてしまうとして、できなくなってしまいます(光市母子殺人事件で死刑回避を狙った弁護人が中傷と懲戒申し立ての嵐に晒されたことは、記憶に新しいです。)。

また、東弁が死刑廃止決議をしたところで、東弁の会員が死刑廃止運動に強制参加させられることはありません。

関弁連アンケートで、廃止派の弁護士が465ってハガキで見たけど、回答率は65だって。死刑廃止に熱心な人はアンケートに答えるから、6%×46%=2.76%!!大半がサイレントマジョリティなんだね。

とあります。これは死刑廃止に賛成な人は皆アンケートに答えるはずだ(アンケートに答えなかった人はみな死刑廃止に反対だ)という、あり得ない前提に基づく議論です。弁護士会や関弁連等のアンケートの回収率は大体低いです。

しかもこれって、臨時総会などの場で実際に死刑廃止に賛成する人の割合を調査してはいけない理由にはなっていないように思います。

私は被害者支援やっているけど、死刑廃止決議されると、信頼関係を築くのが難しくなるから、業務に支障があるのよねえ。若手弁護士に仕事を広げろって言いながら、なんで邪魔するようなことばかりするのかしら。

とあります。しかし、東弁で死刑廃止決議してもなお個々の弁護士が死刑制度の存続に賛成することは自由ですし、仮に冤罪だとしても警察に犯人と疑われる人生を送っていたのが悪いんだから処刑されても自業自得だと思う等と言って犯罪被害者の信頼を勝ち取るのも自由です(死刑に対して積極的な弁護士でないと信頼できないという犯罪被害者が本当にいれば、ですが。)。

弁護士会内の死刑廃止論者の多くは、死生観云々ではなく、現在の刑事裁判の運用の元では冤罪が少なからず生じているという前提の元で死刑廃止を訴えているので、「犯罪被害者擁護という職域拡大のために、無実の人が処刑されるのを黙って見ていろと言うの?」という話にしかならないと思います。

東弁も決議したら、日弁連みたいに、1億円近くの会費を使うのかな?

とありますが、死刑廃止決議をすることと、死刑廃止のために何をするのかと言うこととは全くの別問題です。

そんなに使ってんの?しかもコロナなのに臨時総会って不要不急だし!やるべきことはもっと別にあるんじゃないの!

とありますが、やるべきことが別にあると思う人が率先してそれをやれば済む話です。東弁として死刑廃止決議をしたからって、それ以外のことができなくなるわけではありません。

こんなアジビラに乗っかってしまう弁護士が相当数いると言うことであれば、それはそれでゆゆしき事態ですね。

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