日記(2022/06/23)

ジョン・フォード『幌馬車』再見。冒頭、ベン・ジョンソンとワード・ボンドが交渉するときに二人とも下を向いて何かやりながら話しているなと思ったらナイフで木を削っている。ここに「気の抜けた緊張感」というような妙な雰囲気がある。交渉中の手遊びは集中力の欠如ではなく、むしろ手遊びに集中しつつ交渉しているという点でこれもまた集中力であって、緊張感がどことなく漂っていることの理由はそこにある。のんびりと、しかし確実に何かが始まろうとしているのが感じ取れる。この先面白くならないわけがないという直感。実は初見時はこの場面にここまで感じ入ったことはなかったのだが、歳を取ってジョン・フォードの面白さが分かるようになったということなのであれば嬉しい。馬たちと人間たちが大きな河を渡る場面を見て「ああ冷たくて気持ちよさそう」と素朴な感想を持ったが、そういう感じ方ができるとき映画を見ていて幸せだなと思う。フォードの西部劇は野放しの犬が画面を横切るが、その犬もいつも元気いっぱいで善き存在。この映画は犬が一瞬だけ画面を覆い尽くして始まる。

小泉義之『兵士デカルト』読み終わる。デカルトもっと読みたいと思って帰りに神保町・東京堂書店で小泉義之訳『方法叙説』買う。高貴な魂をもちたい。昨日壊れたイヤホンの代わりに使っていた先代のイヤホンもまた壊れた。この不運続きは何なのか。でもデカルト読んでるから「運命」と思えば何でもなくなる。不運とかはない。単なる運命、それを生きるのみ……。


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