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海の街に住む妹に会いに行く。

 私が自由人になって3年後、妹が自由人になった。3歳違いの姉妹なのである。妹は海の街に住み、私は林檎の街に住んでいる。
 我ら姉妹の計画では、2人が自由人になり、ホームにいる母とホームを母体としながらも、私が一緒に暮らす予定であった。しかし、私が自由人となるタイミングでコロナが始まる。と言っても、青森県では、まだ患者数がゼロ、けれど中央(東京)からの通達を受け、様々な対策をしていくことになる。
 母のいるホームも急遽「面会禁止」。え?いきなり会えなくなるって何?ちょっ、ちょっと待って、母になんて言うのよ。この時、母は腰の骨を折り、治療中であった。未知のウイルスが不安で、ホームの方が安全かと思えた。前の日、仕事帰りに尋ねた私に「担任発表なったか?」と、瞳を輝かせて聞く。目の輝きは、目覚めている感じなのに。時は2月末、担任発表は4月始めのことなのだ。それに、もうすぐ辞める人に向かってそれはないだろう。帰り際、「今日私は(家に)帰れるでしょ。」と、昔の母に戻ったかのように話す。「まだまだ」と答えると笑った。ホントにまだまだの日々がこれから続くとは・・・。
 あと一か月足らずでお別れする子どもたちとの日々も「臨時休校」でぷっつりと切られた。朝早くから子どもたちの作文を読み、面白いなあと思っていた矢先。今年の私、仕事早い、余裕あるなんて思ってた矢先。
 そう、何もかもが急で突然で、さっぱり意味が分からなかった。
 その頃よくやっていたネットのタロット占い。引いたカードが示した言葉。「今を終わらせて人生の方向転換」「ためらいは禁物」「あなたのやってきたことは未完成のまま終わりを迎えたの。」「今やっていることは納得がいかなくても終わらせて新しいことを始めなさいということ。」

 今読むと、まさにその時の状況を言い当てていてびっくりする。でも、そんなに簡単に切り替えられるかぁ~と身悶えしていた私。

 しかし、そんな時、妹は、「もう明日、このウィルスでみんな死ぬかもしれない。もしかしたら、世界が終わるかもしれない。」と言い出して、「小説を書く。」と、突然宣言した。やりたいことしないと後悔するからと。
 確かに、この世の終わり?みたいな雰囲気はあった。スイッチの入ったわが妹は、仕事をしながら、小説を100話書き上げた。(正確には100話以上)
 刺激を受けた私は自由人になり、やっと小説というかエッセイのようなものを書き始める。まだいまだに98話までしかできていない。
 
 自由人3年目、母が亡くなる。束の間だけれど、一緒に自宅で過ごすことができた。その死について書こうと思いながら、まだなせていない。

 昨年、妹が自由人になり、住む街へ遊びに行った。自由人になったからと少しずつ染めていた妹の頭が全部金髪になっていた。

     金髪の王子になりし妹よ満願退職旗きらめかせ

 金髪に染めた妹の背後に「満願退職」と書かれた旗がきらめいて見えた。

妹と朝の散歩


 


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