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マケドニアの家庭自家蒸留(ラキヤ)


BenFiddich店主鹿山です。

2021年9月 BenFiddich休業期間中を利用して
バーテンダーならばもっとジンの主原料のジュニパーベリーの事を知らなければいけないと思い立ち
ジュニパーベリーの自生地を探訪する為にマケドニア共和国へ渡航。
その時の記事はこちら↓



世界中にジンの主原料のジュニパーベリーを
供給しているマケドニア共和国であるが
マケドニア共和国のあるバルカン半島一帯の
土着の酒類文化は『ラキヤ』だ。

これは果実をアルコール発酵させ蒸留した
果実の蒸留酒となる。

例えば洋梨、プラム、桃、アプリコット、葡萄
チェリー、ベリー類など各種果実で呼び名は変化するがそれらを総称したものが
バルカン半島では『ラキヤ』と呼ばれる。


この辺の一帯の国々は今でも田舎にいけば
各家庭に一家に一台の蒸留器を所有している。

自分の家に実った果実の余剰分をアルコールにして寒い冬を越すという文化が脈々と今でも受け継がれている。

マケドニア共和国も例外ではなく田舎では
各家庭一家に一台の蒸留器を所有し季節になれば一年分のアルコールを果実から生成し蒸留する。


ただマケドニア共和国が他のバルカン半島の国々とラキヤに関して認識が違うのは

バルカン半島の国々
ラキヤ=果実全般の蒸留酒

マケドニア共和国の人々
ラキヤ=ブドウの蒸留酒


マケドニア共和国は日本ではあまり知られていないが実はワインの一大産地だ。

輸出先がほぼロシアや旧東側諸国の為
西側諸国に区分される日本とはあまり縁がない。

鹿山がマケドニアに渡航していた時期は9月中旬なのでちょうど収穫期のため農家さんが収穫した
ブドウを買い取ってもらう為に工場に列をなしていた。 
kgいくらなのか知らないが入り口の所で現金のやりとりを見た。

因みにジュニパーベリーもこんな感じでマケドニアでは山に人々が入って採取してその場で現金化してもらえる場所がありシステムがある。



なのでマケドニアでは
ラキヤ=ブドウの蒸留酒である。


マケドニアの田舎では老若男女問わず
自家醸造から自家蒸留まで一貫工程を貫く。

田舎の方では貧しいという理由もあるけれど
こういったDIY的な形で何でも彼らは作ってしまう。これは真っ直ぐ目な木を集めた物置小屋



下の画像は家庭訪問したマケドニア東部ブルガリア国境沿いの山の麓に住んでいるおじさん家の庭。 左が蒸留機で右側のカラフルな箱は養蜂。
その他果樹など自給自足に近い生活。

これが家庭用蒸留機↓


バーテンダーとして興味津々で根掘り葉掘り聞いていたら蒸留機を組み立ててくれた。

ブドウのラキヤは2回蒸留する。
醸したブドウ(ワイン)を蒸溜機に入れ1回目の蒸留。その1回目の蒸留液と醸したブドウ(ワイン)を再度混ぜてまた蒸留してアルコールの回収率を上げると共に葡萄の風味も蒸留酒に取り込む。

そして蒸留した蒸留液は
こういった容器に入れて必要な分だけ取り出す。


マケドニアのラキヤは通常はブドウだが
こちらのご家庭はブルガリアとの国境沿いの人の為、ブドウ以外にプラムの蒸留酒を作っていて
振る舞ってくれた。
ボトルはジャックダニエルだが空き瓶を再利用してるので中身は違う。そして熟成感を出す為に
木の枝をラキヤに入れて浸漬して熟成感を出しているとのこと。
『何の木で熟成してるの?』と聞いたら
『知らん、その辺のやつ』との事。
でも美味かった


日本では家庭蒸留という文化はない。密造だ。


マケドニアで見てきた家庭蒸留は

自分家の敷地内にある果樹を収穫し

自分家の敷地内で果実を醸し醸造し

自分家の敷地内で2回蒸留し

自分家の敷地内の木の枝を入れて熟成風にして

自分家の敷地内で友人達を招いて飲み交わす。

全てが一貫工程。
全ての原料が他所からではない自分家完結。
これが本当のクラフトカルチャーだと思う。


だから中欧、東欧あたりは面白い。
昔の文化がらまだ残っている。


因みにこの山の中に住んでラキヤを作っている
おじさんは8月中旬〜11月末までジンの主原料の
ジュニパーベリーを採取して日銭を稼いでいる。

kgいくらでの取引なのかは知らないが
この地域では自生しているジュニパーベリー採取が生業となるのだ。

養蜂用手袋でゴリゴリ収穫



話は戻りマケドニア共和国でラキヤを飲むときは
食前酒として飲むケースが多い。
トマトとチーズとラキヤ。この三種の神器の組み合わせが鉄板である。


それ以外にも基本的には肉料理主体。
漬物などの酸味テイストも多く味が濃いので
ラキヤをストレートで流し込む。

マケドニアのラキヤ
BenFiddichにもあるので是非興味を持って頂けたら飲みに来てくださいませ。


BenFiddich店主 鹿山博康

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