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ア「ひかりが見えますね」に「まずい」と感じた、あの日がスタート

家電営業からお仏壇屋に転職してひと月経ったころ、同時に同じ部署に出向で来られていた人生の大先輩が「ついて来ませんか?」と、研修の意味で誘ってくださったのが築地本願寺。20年以上東京に居たのに築地の何たるかも知らず、家の宗旨が本願寺派だったのに本願寺の何たるかも知らない47歳のアホなので、とにかくただついて来ました。それ以来20年間ずっと忘れたことが無いのが、今日の見出し写真の構図です。

築地本願寺の前を走る道路の反対側からこの屋根が見えた時に、先輩が「ひかりが見えますね」と仰いました。わたしはその瞬間的に「まずい」と感じました。生理的に「ヤバい」とさえ感じました。というのも再就職斡旋会社に提案してもらったのがたまたまお仏壇業で、なにも仏教や宗教に浸るつもりはさらさらなく、先輩から「勧誘される」ような寒い感じが、実に気に入りませんでした。

でも先輩にそんなことを言えるはずもなく、おとなしく建物の中について入ることになりました。そこで繰り広げられていたのは、お坊さんによる講演会みたいな催しでした。わけもわからず先輩の横に座って聞き始めたものの、まったく興味が持てずさらに食後の睡魔が襲ってきたため、ほぼ最後まで昼寝をしました。おそらく3人くらいのお坊さんが入れ替わりでお話されていたと思います。

きりのいいところで退出することになり興味の持てない時間が終わってホッとしたのですが、先輩にだけは申し訳なくて「せっかく連れてきてくださったのに、眠ってしまいました」と詫びました。すると「ひかりが見えますね」に次ぐ第2の衝撃の言葉が飛んできました。

「ハッハッハ・・。眠りながら法話が聞けるなんて、素晴らしいですね」

申し訳なかったのですが「この先輩、おかしいんちゃう」と心の中でつぶやきました。店舗見学や入社面接ですごく人間的な幹部の方に独特の魅力を感じていたものの、それまで触れていない新しい領域のマーケティングを実践できそうという好奇心が芽生えたのが本来の転職動機でしたので、こんなわけのわからないことを仰る方の言い分などには消費者はそっぽを向くだろうと思いました。

ところがその先輩はそのあとも手を変え品を変え、仏法はすごいということを囁き続けてくださいました。そのしつこさが、ひょっとしたら自分がわからない別の世界があるかもしれないという気付きを引き出してくれることになり、法話は苦手でも仏教の説明なら聞けるかもしれないと「築地本願寺仏教文化講座」に毎月定期的に通い始めることになりました。