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掲示板で出会ったひと はちにんめ③

このときくらいから、わたしはなんだか怖くなってきた。

何が目的なんだろう?
いや、でもわたし何にも持ってないよな。
若くもないし、美人とは言い難い、体だってふよふよだし、お金も持ってないしな…考えるほどに悲しくなってくるけれど事実は動かせない。
わたしがわたしをどう思うかではなく、一般的な市場価値の話だ。
知らぬ間に動画を回されているとか?…売れないわ。
ちなみに本当かどうかわからないけれど、彼は6個下で、見た目で判断するなら更に年下の可能性もある。
清潔感があって、優しくて笑顔が可愛い。
嘘かもしれないけれど都内の中心部に住んでいて、車を持っていて、服装も見るからにパリッとしている。
考えるほどになんでわたしなんだろう、が止まらなくなる。
けれど、自分に熱を上げているであろう目の前の女に嘘をつく理由もない。
彼はラブラブモードで怪しいのは最初からで、更にエスカレートしていく。
こっちは最初から性欲の話ばっかりしているのに、謎だった。
答えが出ないままグルグルと思考を止められなくて、逃げ出したい気分に駆られる。

もう、この時点でアウトだった。
彼の思惑とかは関係なく、わたしがやられてしまっているということだ。
よくわからない、というのはわかりたいということでしかない。

このとき、怖気づいて何度も逃げようとした。
どこに住んでいるの?というわたしの質問にとんでもない答えが返ってきた時点で、「え、ブルジョワジーだね。」とちょっと卑屈な感じのニュアンスを添えたり、相手を引かせようとしたりした。
まともな人は、自己肯定感の低い人を相手にしないはずだから試した。
けれど、そういう返答を彼は無視して、肯定的なことだけを返してくる。
試されていることがわからないはずもないのに、いやがるようなそぶりもなかった。

それ以外にも、彼が引くような返信を何度もした。
それは試すというより、後から引かれるのが怖かったからだ。
わたしは実際のところ面倒な人間だから、それで引かれるようならしょうがないと今なら思えると思った。

でも、そういうやり取りのすべてで彼は正解を出し続けて、わたしの中の信用を勝ち得ていく。
どんなときでも、彼はビクともしなかった。
引きも動じもしない、それでいて繊細さを理解しているのだった。

そもそもなのだけれど、彼がくれる気持ちよさというものの種類は他とは明らかに異なっていた。
触られているだけなのにふわふわして、心までトロトロになってしまう。
いっているかどうかとかわからない男のひともたくさんいるけれど、彼は最初から全部わたしの状態をわかっていた。
心がついてこないと、体が開かないことを知っている。

体だけが欲しくて掲示板を始めたのに、とんでもないことになった。
そう思って、何度も引き返そうとしたけれどできそうもなかった。

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