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ごめんね、子供たち

新型コロナ騒ぎの前。

ちょっと仕事をしようとカフェに入ったときのこと。
レジで私の後ろに並んだ女性ふたりがパフェを注文し、

「ごめんね、子供たち。」

とつぶやいたのが聞こえました。
子供を幼稚園か保育園に引き取りに行く前の僅かな時間。

お母さんが自分へのご褒美にパフェを食べに来ていました。
つぶやきを耳にして、私はある出来事を思い出しました。

ある日の講演会。

ケーキ関連業界の講演で講師を引き受け、
サービスやバリアフリーの話をしたのちの質疑応答で、
洋菓子店のオーナーからこんな質問が出ました。

「アレルギーでケーキが食べられない子供たちがいます。
洋菓子店を経営するものとして、ボランティアでいいから
クリスマスにアレルギーの子供たちでも食べられるケーキを
プレゼントしたいのです。
でも、クリスマスは本業が忙しくて、特別なことが出来ないのです。
何か、私にも出来る社会貢献はないでしょうか?」

そんな趣旨の質問でした。私はこのようにお答えしました。

「アレルギーの子供でも食べられるケーキを特別に作るのは
素晴らしい取り組みです。出来る人は手掛けたらいいと思います。
でも、私だったらこう考えます。

アレルギーでケーキが食べられない子供さんのお母さんも、
おそらく何年もケーキを食べていないはず。

子供が食べられないのに、自分だけ食べる訳に行きません。
アレルギーを持つ子供のお母さんは、私が知る限り自分を責めて
しまっています。『辛い思いさせてごめんね』と。

そんな苦しい想いをしているお母さんに
『お母さん、今日は子供がいないのだから、ボクが作ったとっておきの
ケーキを食べて下さい。そして笑顔で帰宅して、子供さんに笑顔で
接してあげてください。
ボクたちは子供たちだけじゃなくて、お母さんが笑顔になるために
ケーキを作っているのです。』と声をかけてあげてください。」


私は20年前から、障害がある方やご病気の方の旅作りのお手伝いを
しています。

仕事を通じて感じることがあります。

お母様や奥様などご家族は、自分のことなど棚に上げて、
とにかく障害や病気があるご本人のことだけを考えるのです。

私は、

「障害がある方やご病気をされている方の旅行」

ではなく、ご家族が「楽しい!」と感じる旅行を創りたいのです。

私は旅を創るときはあえて、障害や病気のご本人ではなく
ご家族の想いや希望にスポットを強く当てています。

社会貢献は特別なことではなく、
無料で何かをしてあげることでもありません。

今、ご自分がプロとして手掛けているフィールドで出来ることが
たくさんあるのです。

【追伸】

大きなパフェを頼んだお母さん。近くの席で「ごめんね、子供たち」と3回、つぶやいていましたが、5分足らずでパフェを完食してました。
今日はパフェパワーで、笑顔で子供たちを迎えることでしょう。
たとえ子供たちが泥だらけで帰宅しても…。

あ、お母さん。口の周りに何かついている…。

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