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さっき、「花売り場の人!」と 突然呼ばれて ふと顔をあげると、 アーケードの真ん中に立って 団扇をあおいでいる人が こちらをみて、笑っていた 夏は花が売れません。 ☆☆☆ かき氷をつくる機械、 あるうちとないうちがあったでしょう こうゆう風に突然話が始まるお客が 何人か話しかけてくるだけ 今日売上表に 来客数1 とかいて 真っ暗になったアーケードを 見渡してみると 向かいのケーキ屋さんから 小銭を数える音が きこえた 売り上げた小銭が入
昔、わたしはこどもだった どうゆう子供だったかというと 少し変な言い方かもしれないけれど お面をかぶった子供だった お面をかぶってみなといったのは 誰だったかな、すごく変な言い方をすると オトナの中のオトナたちだった 飴がきらいだった 水の中に入るのが、こわかった おまんじゅうを、手べずに、ポケットにいれたまま、走り回っていた でもずっとお面をつけたままだった 花の名前も知らなかった 今日、アーケードで花を買った人はたったの8人だった。 両替をせずに
ランチタイムの灯し火がアーケードを照らしている 花屋に並んだブーケを、すっと掴んで、 アーケードを走り抜ける佐々木さん。 佐々木さんは、昔とてもいい子だったんだそう。 中年と呼ばれるようになってから、 眉毛を全部、剃ってしまった。 はえてくるのは、生きのいいわかめみたいな、艶のある、毛だった。 夏になると、草木をどっさり入荷して、 切り花コーナーの 一番高いところに飾る。 本物の木が 大きく枝を伸ばしたような恰好になっている。 佐々木さんが戻ってきた。
「佐々木さん」 呼ばれた声に振り向くと、眉毛のない人が立っていた。 腰を上げて、レジの中に入ると その人がうしろからついてきた。 新聞紙にくるまった五十本のカーネーションを 台の上に置いて 作業しているわたしの手をみて 「元気だったあ、どうかな、はなしかけてみようかな、って、思って、こうしてるんだけど、ずいぶん長いことお家あけてたみたいだから」 腐っていいるはっぱを取り除いて、一本一本裸にしていく。 アーケードのランチタイムが始まった。 放送の中に、ときお