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朝の十時の鐘が鳴る前の 三十五秒くらい前に アーケードに並んだ 販売員たちは 横から誰かに見られているとも知らず、 髪の毛をさわったり 胸のバッジを動かしたり。 これから始まる朝の儀式。 見つからなかった駅の名を 繰り返し叫ぶように おはようございます いらっっしゃいませと 前を向いて言い続ける でも、花屋は、すぐに駅の名を見つけてしまう。 そうやって見つけた駅を、 毎日ポケットにしまっているので、 エプロンの端っこが膨らんで、破れて もう鋏
アーケードは居心地がいい いつもきまって居心地がいい 長いアーケードの両側に お店を並べて その間を通り抜けていくのは それも居心地がいい わたしのように お店側に立っている者は アーケードの止まったような時間を 撫でてあげる、撫でていると居心地がいい ☆☆☆ 花びらの中に 指先を入れるとき 心が震える バケツに水を溜めている 音が 水が底を打つ音が やけに耳に近い バケツを持ってアーケードに立つと 扇風機を持った人とすれ違った バケツ
