娼年
彼が昼休みに中庭で叫んでいた。
高校3年の時に、彼は下着一丁になって中庭で
「学校に来てんのに学んでるやつなんか一人もいねえだろ!!何でこんなとこくるんだよ!」
「友達とか部活とか薄っぺらいこと言ってんじゃねえぞ!今を生きてるやつなんか一人もいねえ!俺は失望した!!」
「自分は本当にやりたいことやってるって言えるやつ出てこいよ!おら!出てこいって!」
と叫んでいた。
話したことは無いけれど、廊下での立ち話を聞いたことがあり、大人しいけれどぼそっと面白いことを言うやつだなという印象があった。
そんな彼が下着一丁で叫んでいたので、学校中の生徒がみんな窓から身を乗り出して彼をみていた。
もちろん彼はその後ラグビー部顧問に羽交い締めにされ、長い間指導を受けていた。
その後、99%が進学する中、彼は大学には進学しなかったらしいというのも耳に挟んだ。
それから社会人になって、同級生の結婚式で地元に帰った時、3次会くらいのノリで何故か全員でオカマバーに行くことになった。
果たして彼はそこにいた。
緑色にキラキラ光った体に吸い付くようなドレスと高いヒールを履き、かなり濃い化粧をしていたが、私たち全員が彼である事を認知した。
彼に気づいた私たちの動揺とは真反対の反応で、彼は嬉しそうに接客をしてくれた。
「いややわあんた、めっちゃええ男なってるや無いの!」
「あら、あんたは化粧したほうが美人なってるやん!やっぱり女も磨かれていくんやなー!」
反応に困っていたが、彼(彼女)が終始その感じで接してくるので私たちも、強制的にこの状況を受け入れざるを得なくなり腰を下ろすことにした。
曰く、高校卒業後にすぐに家を出て水商売で働き出し、ホストをしていたが同僚の事をめちゃくちゃ好きになっている自分を抑えられなくなり、自覚に至ったらしい。
元々、女性にも男性にも平等に好意を持っていたので性対象の限定がないのは自覚していたが自分の性がどちらの時がハッピーかを考えたらたまたま女性側だったのでその後は女性として生きているという。
「セックスでヤッたとかヤられたとかいうじゃない?アレ、男側も女側も言ってるんだけど、別にセックスなんか大した行為じゃなくて、食事とか睡眠とかと同じような位置付けなの。そうじゃない?なのに、何であんな盛り上がってんのかしらね。盛り上がってるやつって大抵、経験もなくて下手くそだから、それ自慢してるかどうかでセックス上手いかどうか分かるわ。」
いや、そりゃお前を満足させるのはなんかもう色々大変だろうよ。とこの映画見て思い出していた。
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