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アルキメデスの大戦

「逆に数字で考えられないことって何ですか?」


私も算数は大好きだった。

2歳くらいから公文式に通わせてもらったおかげで、計算で自分より早く正確な人に会ったことがなく、成績も良くて褒められていたので自信を持っていた。


しかし、高校生になり数学が本格化してからは、苦手意識が勝つようになっていた。

算数はアイディアと計算で何とかするという楽しさがあったように思うのだが、公式というものを当てはめる、公式を記憶して何が良いかを探る、と言うのがめんどくさがりの私にはハマら無かった。


同級生のM君は違った。

なんかいつも数学の成績一位の人がいて凄えな、と思っていたがM君の数学にかける情熱は、「高校生の時に勉強を頑張っている」時点で凄かったのだがそんなレベルを遥かに上回っていて、数学を愛しているのが私たち他の生徒にも伝わるほどのものだった。

M君はテストが近くなると、そのテスト範囲を踏まえた模擬試験を自分で作って、私たちに配布してくれた。

「今回はこういう公式が出されます。つまりどんな文章題であっても、この公式を使えば良いわけです。この公式の背景にはこう言った計算式があります。これを理解しておけば、どんな変化球にも対応できます。」

実際、その模擬試験は恐ろしいくらいの精度で的中しており、ほぼ間違いなくその模擬試験をやっていたものは数学の成績が向上していた。


もちろんその恩恵を受けていた私は、彼が何故それほどまでに数学を愛しているのか知りたくて聞いた。

「逆に数学以外で興味を持てることが無いんですよ。僕は。スポーツは身体能力とか、答えが出す前から決まってるように見えます。社会や歴史は過去なので興味が持てません。化学や科学、物理は多少意味があるように思えますが、数学の方がもっと純度が高いですよね。数字で考えたいんです。」

「数字で考えられないことは信用できない。信用出来るものが好きなんですよ。」


彼は、高校から進学できる大学には行かず、国立大学に進んでいった。そんなの、彼以外に知らない。

その後は保険会社でアクチュアリーとして活躍しているらしい。

M君が生まれる時代が違ったら、こうなってたかもなーとこの映画を見て思った。


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