【ショートショート】動かないボーナス#毎週ショートショートnote

　ボーナス支給日。

　この会社はその人に合ったものを手渡しでくれる。真山さんは米袋。斎藤さんは黒い箱。貴金属だろうか。

「今期はありがとう」

　社長はそう言い、僕の前に段ボールを置く。

　僕は今期、誰よりも働いたはずだ。

　期待に胸を弾ませて開くと、中には毛足の長い動物がいた。長い爪のある前足で段ボールを掴み、ブタ鼻のつぶらな瞳が僕を見つめる。

「君にはコリーを贈ろう。1か月、ナマケモノになりなさい」

　思わず訊き返すが、社長は僕の肩を労うように叩き、遠慮するなと言って、背中を押した。

　家に帰ると、コリーを温室に放つ。

　のそりと段ボールから出たものの、所在なさげだ。温度湿度の管理はできるが、とまり木が必要だ。明日の朝、買いに行こう。

　ポカポカする日差しに目が覚める。天井から吊った鉢に爪をかけぶら下がっていた。

　温室の入口では僕が見あげている。はやくとまり木を用意してくれればいいのに。

　まあ、いいや。どうでも。

　再び目を閉じてまどろむ。

（４０４字）

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前回に引き続き、たらはかに（田原にか）様の企画に勝手ながら乗っかっています。

今回のテーマは「動かない」「ボーナス」。

「動かない」生き物といえばハシビロコウが思い浮かびましたが、ちょっと飼いにくそうなのでナマケモノに。

会社から「ナマケモノになりなさい」と言われてみたいと思って書きましたが、既になってることに気が付いた昨今・・・。