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揚げ玉と天カス

この世の中には似たものが多い。
ヒラメとカレイ。
おはぎとぼたもち。
カマキリとカマキリモドキ。
と枚挙にいとまがない。

"揚げ玉と天カス"もその一つだ。

天カス。
天ぷらを揚げる際に発生する衣のカスを集めたもの。捨てるのも忍びないのでうどんそばにご自由にどうぞスタイル。元祖リユース。
入れるとコクが出てウマイ。

揚げ玉。
入れるとコクが出てウマイもの。
入れるとウマイから入れるとウマイ玉として揚げられる。
小エビ入れたり、イカ入れたり、青のり入れたりして作られる事も。

揚げ玉は、揚げ玉になるべくして作られる。
よし、揚げ玉揚げるか。と若い板前さんやコックさんが揚げるのだ。

一方、天カスは、望まれて作られる訳では無い。
よし、天ぷら揚げるか。と板前さんやコックさんは天ぷらを揚げ。
あー、結構カス出てきたな油汚れるし集めるか。
と集められ作られるのだ。

望まれず生まれたにも関わらず、しっかり揚げ玉と同じ仕事をこなす天カス。

天カスにはエリート家族の出来損ない末っ子感を感じてしまう。

父はエビ天の衣に、兄はイカ天とアナゴ天の衣だが、3男は未だ天カス。
父親や兄に認められる為、学園では努力して運動も勉強も学年トップ。
だが、エリート家系の出来損ないとして同級生には疎まれ、また家族にも学年トップ位では認められない。
唯一優しかった母はカボチャ天の衣、だが天カスが幼い時に亡くなっている。

揚げ玉を見ては、
何故アイツは僕と変わらないのに皆に愛されて、僕はこんなにも…。と少しづつ黒い感情に侵食されていくのだった。

という想像を禁じ得ない。

スーパーでもうどん・そば・ラーメンコーナーでは揚げ玉をよく見るが、天カスとして売ってる姿はあまり見ない。

みなさんも惣菜コーナーで天カスを見かけた時には、
私はあなたの努力を分かってるよ。

と温かい気持ちで接して欲しいものである。

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