お肉券は「あなたが守りたいもの券」へと変わった

一クラフトビール好き、そしてそれに関わって生きていく事を決めた者としての、特別定額給付金についての提言である。この10万円はクラフトビールを守ることに使いたい。

特別定額給付金の意味

なんだかずいぶん昔のような話にも感じるが、コロナ対策の緊急経済支援策として「お肉券」「お魚券」といった形が要望として上がるなど話題となっていた。当然、世の中は批判の色がほとんどであったし、実現には至らなかった。
その後経済支援策は、生活に困るほどの世帯に限定しての30万円給付の方向で進んだが、土壇場で全家計を一律で10万円支援する「特別定額給付金」へと変更された。
家計の支援を目的として掲げているが、一律給付とするのであれば実質的な目的は「経済対策」だ。ギリギリの生活を強いられる人が(当初の30万円案と比べ)20万円を受け取れなくなり、余裕のある家庭で10万円が眠る(消費は給付前と変わらない)状況になれば効果は希薄する。そういう性質の対策だ。

そういう意味では、当初の「お肉券」の方に目的としては近い。「お肉券」は商品券の形を取る事で、眠る事なくお金が循環することを狙っている。
それが「お肉」に限定して声が上がったのは、背景の狙いは置いておいたとして、お肉の生産者を守りたいという意図からだ。(そうすることでメリットのある政治家は当然そういう要望は出すし、出さざるを得ないところもあるだろう。) 生産者の立場として切迫した状況であるのは間違いないだろうし、それが実現されていれば大きな助けにはなっていたところだろう。
それが、特定の業界だけを優遇することで非難された。その結果給付の形は現金となった。

これは、特定の業界だけを政府として優遇することはできないので、優遇先、支援先は国民一人一人に委ねられたことを意味している。
もちろん自分自身への支援が必要な人も多いだろうし、それに充てる、ということも選択肢の一つだ。今、あなたは何を守りたいのか?を決めなくてはならない。

一人10万円のインパクト

自分は、お肉の生産者と同じくコロナによって危機に直面しているクラフトビールの業界を支援したい。業界に身を投じる者として、自分自身を守ることにも繋がるという思いもあるが、飲み手として、これまでクラフトビールを通じて多くのものを与えてもらっている。自分はその世界を守りたい。
「クラフトビール券」としてうちには届くのだ。

この10万円の支援は、守ることに繋がるのだろうか。
インパクトを試算してみる。
※以下は試算内容。読み飛ばしても問題はない。

東京商工リサーチの第10回 地ビールメーカー動向調査によると、2019年1-8月の主要70社の総出荷量は8,966.8kL。この数値を参考にする。
これを単純に8で割ると一ヶ月当たりでは、1,121kL。試算として、小売価格ベースで想定しながら1Lを2,000円(660円/330ml)で仮置きすると、70社で22.4億円/月程の売上が想定される。

これは70社の数字なので、業界全体を仮に400社としてさらに330社分の売上を試算して加算する。
上記調査によると、総出荷量の内、上位5社で約半分を占めている。上位5社分を除いた出荷量を残り65社で平均し、同様に月辺りで換算すると一社当たり出荷量と売上は、8.5kL、約1,700万円となる。
この規模感は、上記で参照した調査とは別の、帝国データバンク クラフトビールメーカー141社の経営実態調査における、クラフトビールを主業とする54社の売上規模と乖離しない。
(月10回仕込みとすると850Lバッチ計算なので、マイクロブルワリーがプレイヤの中心とすると、高めに出ている方?一般的な仕込み回数もよくわかっていないので、実態と照らした妥当性の判断はついていない。)

この一社当たりの売上を一律330社分の売上と仮定として加算すると、
22.4億(70社分) + 56.1億(330社分) = 78.5億円
がクラフトビールメーカー全体の一ヶ月当たり(1−8月期間における)の売上と想定される。
小売価格を念頭においているため、大きめに見積もっている想定ではある。

クラフトビールメーカー全体の一ヶ月の売上を78.5億円として、特別定額給付金の給付額である10万円で割ってみると78,500。78,500人、10万人にも満たない人数で、短期的な落ち込みを賄うことが可能なのだ。
19年の「けやきひろば秋のビール祭り」には9万人の来場があったそう(もちろん延数だろうが)。

クラフトビールファンが結集すれば、十分にクラフトビールメーカーを助けることは可能だ。
もちろん必ずしも10万円全てを何かに回せ、ということではないし、ビールメーカーを救うどころでもないビールファンがいることも理解している。
ここではただ、一人一人が10万円を手にして行使することのインパクトを示している。決して小さな力ではない、支援として十分に機能し得る力を持っている。

※念の為、短期的にお金が回るだけでは救うことにならないのではないか、ということにも否定をしておく。「今」を凌ぐことは非常に大きな意味を持ち得る。

クラフトを守ろう

クラフトを守ろう。これは単なる自分の思いだ。Afterコロナ/Withコロナの時代に味気ないビールしか飲めないなんてことは悪夢だ。
コロナをきっかけに社会は変わっていく。ただし、変えさせられるのではなく、主体的に変わろう。主体的に選択していける社会へ、主体的にビールを選択してく社会へ。

血税が自分たちの手にもどり、予算の執行権限が直接与えられた。あなたが守りたいものを守れる時だ。




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