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8月6日 午前7時過ぎ

目が覚めた。
数日前から続く関節痛で体が怠く、布団の上でスマホを見ながら夢現にぼんやりしているとリビングから旦那が現れた。

日曜日だというのにカッターシャツを着て、休日出勤らしい。
昨日は私が仕事だったから、この土日はすれ違いだ。
私はごねるような仕草をすると、火曜は代休やからと宥める旦那。
その日は推しぬいGETするためにゲーセン巡るねん!一緒に行こな!と誘う。
普通に行かんと断られたが、当日は絶対について行ってもらう。

そんな話しをしながら、

「気ぃつけてな」背中をさすり、玄関から見送る。

気をつけてと声掛けをすると外出中に事故などのトラブルに遭遇する確率が下がるらしい。

だから毎日、眠過ぎて玄関まで行けなくても「気ぃつけてな」は必ず言うようにしてる。

今日もそのようにした後、日付をふと思い出した。
そして、瞬間、嫌な想像が頭を駆け巡る。

78年前の今日のあと1時間後に原爆が落ちた。
あの日は平日で快晴だったと知る。

今の私のように、誰かを見送った人はどれくらい居ただろう。
旦那のように、誰かに見送られながら仕事や学校に行った人はどれくらい居ただろう。
あの時のあの人達は、私と何も変わらない、ただ8月の暑さに汗をかきながらいつも通りの生活を過ごすと信じてたはずだ。


もしも、もしも1時間後の8時15分に、今、私たちの頭の上に原爆が落ちてきたら。

寝室の窓際で二度寝しようとしている私はどうなる。
通勤電車に揺られているであろう旦那はどうなる。

私は直ぐに死んでしまうのだろうか、生き延びるのだろうか。生きていたとして、どんな状態だろうか。生き延びたとして、なにも恐れずにこの先の人生を生きられるだろうか。
旦那とは再会できるのだろうか…


…すっかり目が覚めてしまい、リビングの窓から外を見る。
真向かいの広大な畑。土と緑が広がる。その先には都市部のビルが並ぶ。快晴。遠くにスカイツリーが見える。
風が網戸を通り抜ける。

畑にいた鳥が一斉に飛び立つ。

代わり映えのない景色と、19時に旦那がこの家に帰ってくることを私は無責任に信じている。


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