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【ジャズ】基本のジャズギターアルバム10選


近頃はAppleなどがプレイリストを公開しているが、アーティストのチョイスに異論はないものの選曲に異論があるので、僕なりに「これ聴いとけばだいたいのジャズギター弾きと話ができるよ」を選んでみました。
かなり王道寄りのチョイスです。思いついた順ですが、どうぞ。


UNDERCURRENT / Bill Evans & Jim Hall

ビル・エヴァンス(Piano)&ジム・ホール(Gt)の名盤中の名盤。
ジャズギターとしてはモダン寄り、いわゆるジャズジャズしたビバップぽい演奏というより、ハーモニーとリズムのインタープレイを楽しむような内容になっています。このアルバムが超有名だからといって、この演奏がジャズのど真ん中ではないことは自覚しておく必要があると思います。
僕は高2のときにアルバムを買って、1曲目でぶっ飛びました。






Full House / Wes Montgomery

ウェス・モンゴメリー(Gt)は親指だけでピッキングするちょっと特殊な奏法のプレイヤーです。彼についても同上、有名だからといってジャズギターのど真ん中ではないと思います。
プレイは基本的なコードトーンを逸脱しない上にリズムがビシッと決まっているので、一聴してフレーズが分かりやすいのが特徴。ちゃんとメロディを思いついて弾いている、歌うようなフレージング。
専門学校の入学試験でこのアルバム収録2曲目「I've Grown Accustomed To Her Face」を披露したのも良い思い出です。






Virtuoso / Joe Pass

ジョー・パス(Gt)はソロ・ジャズギターの第一人者。ソロアルバムのVirtuosoはその後のジャズギタリストが「メロディとコード、どっちもやらなきゃいけないよ」というテーゼを樹立した点において、知っておくべき作品だと思います。
彼のプレイはど真ん中のビバップスタイルです。ギターテクニックに注目されがちですが、チャーリー・パーカーやオスカー・ピーターソンに引けを取らない美しいラインのフレーズが満載です。バンドで弾いている彼もかっこいい。
ジョーパス奏法と呼ばれるコードとメロディを同時に弾くやつ、基本コードをいっぱい練習すればできるようになると思います。僕がそうでした。







Midnight Blue / Kenny Burrell

ケニー・バレル(Gt)のプレイは多彩ですが、1つ芯が通っているのはマイナーペンタトニックがベースになっている点です。フレーズから運指を鑑みるに、彼はいわゆる普通のマイナーペンタにクロマチックを足して「この運指でなんでもできるやろ?」をやっているんだと思います。
もちろんコーダルでビバップなフレーズも登場しますが、それらがどうもギターの運指的に弾きやすいポジションでやっているように聴こえます。フレーズの終わり方が6弦ルートのマイナーペンタ(有名なやつ!)になってることが非常に多いので。
個人的にGill Evansで弾いてるのが好きです。









Jim Hall and Pat Metheny

パット・メセニー(Gt)をジャズギターの枠で紹介するなら、ジム・ホールとのデュオ作品であるこれをチョイスするしかないかと。パット・メセニーは彼のグループの音楽が本当に素晴らしく、作曲家として後世に名を残す偉人だと思います。
プレイに関して、彼の言葉を借りるなら『トライアドの美しさを追求している』の通り、曲のコードにどんなコードトーンを加えてハーモニーを展開できるか?を実験している感じです。彼のトーンが甘く、リズムも完璧なのでイージーリスニングと解釈されることも少なくありませんが、実際に演奏してみようとすると難解な上に実験精神に富んでいることに気が付くでしょう。
メセニーの一番好きなアルバムを選ぶとしたら、Imaginary Dayにします。








Live at Yoshi's / Pat Martino

パット・マルティーノ(Gt)は独自の音楽理論を構築してひたすらノートを連打していく、ギター版シーツ・オブ・サウンドの第一人者
独自の音楽理論といっても基本はジャズのそれで、曲のコードに対してどう解釈し、いかにつなげていくかという方法論です。これはジャズ即興のすべてと言ってもいい。
彼はレッスン動画も沢山アップしているので、英語ですがチャレンジしてみるといいと楽しいです。もちろん簡単ではありませんが、ギターの平行移動性能をうまく活用するアイデアに溢れています。






Voices / Mike Stern

マイク・スターン(Gt)は現在のテクニカルジャズギターのルーツとなるコンセプトを沢山輩出しました。彼曰く、彼の方法論はチャーリー・バナカスに由来しているそうですが、それはまた別の機会に紹介しましょうか。
専門学校時代、彼は毎年のように来校してはコードトーンを弾くことの大切さを解いて帰っていくので「毎年一緒だなぁ」と内心退屈していたのです。ですが後々になって、やっぱり基本のコードトーンを追いかけることがいかに重要かを思い知ることになりました。別のミュージシャンの話で恐縮ですが、ブラッド・メルドー(Piano)もニュースクール時代に「オールドファッションのジャズをひたすらやらされたけど、それが今に繋がっている」とインタビューで語っていましたし、やはりある一線以上に上がるならばコードトーンを100点満点にしなきゃいけないんだと思います。
ギターの演奏以上に、僕はマイク・スターンの作る曲がすごく好きです。






Tal / Tal Farlow

タル・ファーロウ(Gt)はど真ん中ビバップジャズギタリストなので、僕は彼を指標にモダン系なのかトラディッショナル系なのかを判別するようにしています。なにせこの時代にしてはずば抜けたテクニックの持ち主なので、今でも古さを感じさせません。
古さを感じさせない、というのは言葉を変えると”時代を越えるシステム”を持ち合わせているということで、彼のやっているコードトーンをクロマチックで繋いでいくというジャズ即興の基本は、やはり本格的にジャズをやろうという方には必須なのだと再確認させられます。
僕は彼の演奏を聴くと、リズム感がよれないって大事だなっていつも反省します。












Swallow Tales / John Scofield

ジョン・スコフィールド(Gt)の特徴は、細いゲージの弦を張っているところです!というのは半分冗談ですが、半分本当です。細ゲージの弦だからベントやビブラートによる音程変化が大きく、歪ませた音色もロックのそれに近いのですね。
プレイの内容ではよく”アウトフレーズ”がフォーカスされます。これはモチーフ展開をベースにしたモード奏法だと僕は思います、つまり、どのテンションを選んだかというより、リズムが統一されていることで聴き手が勘違いして、よりヘンテコに聴こえるという。
しっかり基本を押さえているからこそ型破りなプレイができているのですね。彼自身の曲も一筋縄にいかない。面白いギタリストです。







Reflections / Kurt Rosenwinkel Standerds Trio

カート・ローゼンウィンケル(Gt)は現代ジャズギターのトップランナーの一人です。バークリー時代に聞いた彼の逸話ですが、彼はメジャースケールとマイナーペンタしか知らないでバークリーに入学して、在学中もほぼその2つのスケールで乗り切ったというのです。面白いですね、でも確かに今でも彼のフレーズはルートに落ちつくものが多いので信憑性のありそうな話です。
現代のジャズギターはもはや新しいロジックは出尽くしていて、だからこそ歌い回しやニュアンスに特徴がある人が生き残っているような気がします。ジョナサン・クライスバーグやギラッド・ヘクセルマンもそれぞれに武器があり、だけど同じようなシステムで演奏しています。あえて古典的なビバップを演奏するパスクァーレ・グラッソも同様ですね。








あとがき

とりあえず急ぎで10選してみました。お好みのジャズ・ギタリストが見つけられたなら嬉しいです。
ジャズって、どういう順番でどんなプレイヤーを聴いてきたかでその人のジャズ観が大きく左右されると思うのです。鳥が生まれてすぐ見た対象を親だと思うように、1枚目のアルバムを「これがジャズ!」と錯覚するみたいな現象です。
また現代はその人に合わせた音楽がオススメされるので、たとえば最初にマイルスを検索したなら、その後もマイルスに繋がる曲が優先的に供給される。もし最初にデレク・ベイリーを検索したら、フリージャズやアバンギャルドがオススメされるようになります。
だからこそ、網羅的にキュレーションすることって現代こそ大事だと思うのです。ジャズの歴史、こういう先駆者がいて、こういうところが当時画期的だったんだよと教えてもらうためにも、ジャズの学校や教室って今後も必要になるんじゃないかと。
僕もその一助になれたらと精進するばかりです。

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