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【前立腺ガン治療日記⑧】どうしても、うまくいかないこと

前立腺ガンの陽子線治療も8日目。3分の2が終わった。やはり副作用は否めず、どうにもトイレに行く回数が増えた。なんとなく下腹部にチリチリとした痛みも感じる。しかし、生活に支障が出るほどではなく、数多あるガン治療の中では、ダメージは最小限なほうだと思う。

先日、子宮頸ガンの手術をした友人の話を聞いた。実は、子宮頚ガンになったという女性の友人が周りに多くいる。子宮頚がんになると、大なり小なりの外科的手術が必要になるらしい。その友人は、早い時期から小さな腫瘍が見つかっていたそうだが、悪性と判断できないため切除手術ができなかっただそうだ。最近、やっと手術でガンをとったのだそうだ。

これだけたくさんのキャリアの人たちがいるわけだし、成人の2人に1人がガンであるなら、そんなにガンであることを重たく考えなくても良いのだろうか…とも思案する。進行状況や部位によって、扱いやややこしさも変わるわけなんだけれど、もっと前向きに話していった方が良いのかもしれないと悩むところではある。

わりとたくさんの人に「ガンになりました」とカミングアウトしているのだけれど、高齢の母にだけは話すことができていない。母に余計な悩みを増やすのが怖くて、どうしても言えない。しかし、これはやはりちゃんお話したほうがいいのではないかと思い立ち、8日目の治療が終わってから隣町の実家に向かってみた。

北海道は今までにないくらいの猛暑であることと、小さな姪と甥が遊びに来ていることなどが重なり、なかなかゆっくり母と話をすることができない。チャンスはちっちゃい子どもたちが寝静まった後と考えていたのだが、ぼくも母も暑さに疲れて寝てしまい、話ができずに次の日の朝を迎えた。

もちろんタイミングの問題もあるのだが、ガンであることを伝えたときの母の顔を見るのが怖い。母親というのは、子どもの病気や悩みの根源を、すべて自分の存在に結びつけてしまう。うちの母はその典型的だ。「それは、母のせいじゃないんだよ」と何度話しても、きっと、持つべき必要のない罪悪感を持ってしまうに違いない。

それを考えると、ぼくの口からは最初の一言が出てこない。

次の日は、朝から姪と甥をつれて札幌に遊びに行く約束をしてしまい、結局、母にはカミングアウトできずに終わってしまった。「あんたが健康で良かったよ。母さんはそれが一番嬉しい」と高齢の母は時々ぼくに語りかける。母も80歳近い割には元気なほうだと思う。暑い中、1人で病院に出かけているし、なんなら、友だちとパークゴルフにも通っている。

どうやったら、母にカミングアウトできるのだろう。ここのブログに匿名で書き続けているのは、このモヤモヤをどうにもできないからだ。吐き出している。治療はうまくいっているほうなのに、この一点だけを解消することができない。

そんなこんなで悩みは続く。

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