石垣と海

ある海辺に、石垣があった。
家を囲う石垣だった。

石垣は、朝日が差し込んで、水面がキラキラ光る海を見るのが好きだった。

時間が流れ、家はなくなっても、
石垣は残された。

また、時間が流れ、海は埋め立てられ、
町ができた。
石垣は残された。

石垣は、海が見れなくなって、残念に思ったが、
町の人や車、建物を眺めるのは面白く思った。

石垣はときどき、また海を見たいなと思ったりもした。

ある日、町を津波が襲った。
石垣は、海をまた見れたことを喜ばなかった。
それより、町の人を守らないとと思った。

町の人たちは、石垣を超えて、逃げた。
波が石垣のところまでやってきた。

石垣は、必死に踏ん張った。
石垣は町の人たちを守ることができた。

町の復興が始まった。
石垣は、また、海を見ることを憧れながらも、
町の人や車や建物を楽しそうに眺めていた。

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