アイルランド紀行 vol.14「マサーカと呼ばれて」
私の名前はマサアキという。
正亮、と書く。
これが読めなくて「マサアキラ」とか「マサスケ」と呼ばれたことがある。
どっちもいねーだろ、って思う。
電話口でも説明しにくくて
「マサは正しいという字、アキはリョウって字で、ナベブタにクチ書いてカタカナのワの下にル、って書くやつです。」
というスクリプトを準備している。
「あー、下のとこが冗談のジョー、みたいな字ですね?」
と言われた時のあの敗北感は何なんだろうか。
冗談のジョーて。
アイルランドでマイネームイズ「マサアキ」と自己紹介をしたところ、やはり日本語はハッキリ母音が強すぎるからなのか、アイルランドの方々にはちょっと発音しにくい様子。
アイリッシュにはほぼ「マサーカ」と呼ばれることになった。
スイス人とかチェコ人とか、フランス人、イタリア人、スペイン人は「マサーキ」と言えなくもないみたいだったけど、先生たちが「マサーカ」と呼ぶので私はマサーカとなった。
すると新しく同じクラスに入ってきた日本人が混乱して
「マサーカってどんな漢字書くんですか?」
とか聞いてくる。
ないよねそんな字は。
んで、例の漢字の説明をすると、
「あー、冗談のジョーの!」
ってだから俺は「冗談のジョー」じゃない。
燃え尽きて灰になっちゃうよ。
「マサーカ」をアイルランドで一番発したのはおそらくホームステイ先のダニエル・ガラハくん、確か5歳だったかな。
好奇心旺盛の元気なフレンドリーボーイで、ステイ先の蔵田マサーカの部屋にずんずん入って来てた。
だいたいいつも「キャスパー」くんという白くてもふもふの天パ毛質の小型犬と一緒に入って来て、
「キャスパー!マサーカ!カモン!キャスパー!マサーカ!」
とかってベッドの上含めて部屋中をワチャワチャと走り回って、ママに怒られながら連れ去られるというルーティーン。
カモンじゃねーし。
キャスパーとマサーカ同列だし。
でもどっちも天パだからいいのか。
ベッドの上は白い天パヘアーまみれなんだけど、まあただ寝る分には困らないか。
ダニエルは、やたらとマサーカに物をくれていた。
コップとか、おもちゃの車とか、瓶のフタとかなんかいろいろ。
なんだろ子分にしようとしてたのかな。
とにかく元気ですごくなついてくれていて、お別れする時はちょっと淋しかった。
今はもうすっかり大人になってるんだろうなあ。
キャスパー、生きてたらものすごい長老だけど。
にしてもなんていう犬なんだろう。
「犬 小型犬 天パ」で検索したら出てくるだろうか。