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全話見てからのスティーブン・ユニバース#6「Cat Fingers」#13「So Many Birthdays」

2020年3月27日、アメリカでスティーブン・ユニバースが完結しました。
それから、ひと月が経つものの、私の心は整理がついていません。

『Steven Universe』『Steven Universe:The Movie』『Steven Universe Future』全てを見終わった今(日本未放送分は北米iTunes等でリージョンフリーの配信をしています)、心の整理をするため、全話見終わってからの視点で、いくつかのエピソードで気づいたことを書いていこうと思います。

------以下、全話のネタバレを含みます-------


#6「Cat Fingers」#13「So Many Birthdays」
~何が彼をそうさせたのか~

2つのエピソードは似通った点がいくつかあります。

第一にスティーブンの「死」を想起させることです。ごく初期のスティーブン・ユニバースは、大まかな印象として子供らしい世界観、和やかな印象で振り返ることが多いのですが、実際にはダークな側面が垣間見えることもありました。(このバランス感覚は、SUFでも#6"A Very Special Episode"のような無邪気で和やかなエピソードがあったことを想起します。)

第二に、こちらが本題となりますが、ジェムズにとっての「Shapeshift(変身)」の概念を視聴者に伝える一方で、スティーブンにとっての「Shapeshift」がジェムズのそれとは必ずしも一致していない、非常にユニークであることを示唆する点です。その描写がSUF#19”I Am My Monster”に繋がっていくと解釈しています。

物語を通して、スティーブンが意識的に「Shapeshift」する例はいくつかあります。代表的なのが、SU#75"Steven's Birthday"でコニーに見栄を張るため成長した姿(首がある)に変化したことや、SUF#7”Snow Day”でジェムズとのゲームに負けて”Classic Steven”(首がない)に変化したことでしょう。その一方で、今回取り上げる”Cat Fingers””So Many Birthdays”の「Shapeshift(のようなもの)」は無意識かつ無秩序にスティーブンの体が変化していきます。

”Cat Fingers”では、スティーブンが指を猫に変化させていく中で、戻し方が全くわからず錯乱していきます。結果的にどんどんと無秩序に体が猫化していき、グロテスクな(可愛い)化け物になってしまいます。その理由は明確にわかりませんが、彼が未熟で「Shapeshift」をコントロールできなかったのだろうと推察ができます。理由がわかるのは”So Many Birthdays”です。

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”So Many Birthdays”では、ジェムズのために開いた誕生日パーティが「子供っぽい」と軽くあしらわれたことを契機に、自身が子供であることを恥じ始めたスティーブンは、どんどんと老化していきます。戻し方がわからず、錯乱し、より年老いてしまう姿は”Cat Fingers”と相似していますが、最終的には、自身が子供であることを受け入れること(むしろ誇らしく思うこと)で、彼の姿は元に戻ります。

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ここで明確になる事実は、パールが「(スティーブンの)気持ちとジェムが反応しあっている」と言うように、スティーブンの無意識で無秩序な「Shapeshift」は、錯乱した彼の不安定な心情と強く結びついて生じていることです。だからこそ、自分自身が猫のモンスターと自覚した時に猫の化け物となり、子供であることを恥じた時にどんどんと年老いてしまいました。SU#75”Steven's Birthday”で、成長した姿でコニーに見栄を張り続けるも、強い不安を感じて、赤ちゃん返りしてしまう場面も同様でしょう。そして、私はSUF#19"I Am My Monster"も同じ様に解釈しています。

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”I Am My Monster”で、感情的な“メルトダウン”をしたスティーブンは文字通り怪物となってビーチシティに襲来します。自身に絶望した自己破壊的な衝動が他者を傷つけていくことを示す象徴的な場面です。
SUFの製作が発表されて新OPが公開されたときから「Corruptted Steven」という説をよくみかけました。OPで映る怪物の愛嬌ある顔がスティーブンに似ていることから、スティーブンが何らかの理由で怪物となるのではないか、その理由はGemが汚染されるからではないか、という説です。
しかしながら、SUFを通じて、スティーブンのGemが汚染されるような描写は直接的にはありませんでした。描かれてきたことは、抑えきれないダイアモンドの力、見失った将来の方向性、ジェムズからの自立、ジェムズたちの自立、コニーとのすれ違い、父親への怒り、他者への破壊的な衝動と行動、自己像の崩壊等、その全てが積み重ねてきたトラウマと絡み合い、スティーブンが精神的苦境に陥る過程でした。
その過程でGemが内部から汚染されたのでは、という解釈がある一方で、私は、自分自身を怪物だと信じ切った結果の、無意識で無秩序な「Shapeshift(のようなもの)」と捉えています。それは上述してきた"Cat Fingers""So Many Birthdays"と重なる描写だからです。

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ガーネットの「自分自身を怪物だと信じるかぎりは、スティーブンはそのままだろう。」というセリフはとても象徴的で、私は現実世界と何も変わらない、人の在り方として受け取りました。

一方で、この解釈に違った視点を加えることもできます。スティーブンが元の姿に戻るときの描写です。スティーブンが気遣い助けてきた人々こそが、彼を救うために立ち上がり、スティーブンは自分自身を取り戻していきますが、怪物化したスティーブンの涙が最後の一押しのようにも見えます。4人のダイヤモンドの「癒しの力」で彼の汚染されたジェムが元に戻った、と考えることもできるでしょう。
「Corruptted」であったのか「Shapeshift」だったのか、それともその両方だったのか。解釈が分かれる点ですが、この余白の残し方もスマートだと思います。個人的には「Shapeshift」寄りの考えですが、「癒しの力」も要素として考えることができる描写は、途方もない怪物となったスティーブンが元の姿に戻ることに、より大きな説得力が与えられているとも感じています。
本題とはずれますが、この解釈以上に重要なことは、スティーブンの問題をこのエピソードだけで綺麗さっぱり解決させなかったことです。SUF#20「Future」で、さらりと語られるように、彼は精神的落ち着きを取り戻した今もセラピーに通い続けているのです。

〇グレッグのバンにある”Cat Fingers”の写真
エピソードごとの些細なつながりの描写として、SU#48”Story for Steven”のグレッグのバンの車中に猫指スティーブンの写真があります。ロナルドが撮ったものを取り寄せたのでしょう。

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〇”So many Birthdays”における昔のジェムズたちの写真
SU#106”Buddy's Book”
で、スティーブンがバディの冒険譚を読みながら想像するジェムズの服装はこの写真と一致しています。彼の記憶の片隅にあったのでしょう。

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(次回は#19”Rose's Room”をとりあげます。)

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