ダイジェストよりもディテールが知りたい
『むかしこっぷり』というマンガを読んだ。身近な人の、なんとなく忘れられない小さな昔話を集めた短篇集だ。
子どもの頃、近所に住むお兄さんに10円玉をもらったこと。教室の窓の外に生えていたポプラの木が切られたこと。仔犬がいなくなってしまったこと。
人生のダイジェスト映像からはカットされるけれど、間違いなくその人の血肉となっているようなエピソードが、やさしくささやかに編まれている。
***
最近、インタビュー記事をあまり読まなくなった。丁寧につくられた記事、キャッチーでおもしろいコンテンツはたくさんあるのに、どうも心を惹かれない。
乱暴な言い方をすると、「ダイジェスト」に飽きてしまったのだ。編集でカットされるような、なんの伏線でもない、端切れみたいな話が聞きたいのだ。
かっこいいインタビューよりも、役に立たない話が聞きたい。聞いても聞かなくてもどちらでもいいような話が聞きたい。なんとなく忘れられないごはんのこととか、昔着ていた服のこととか、そういうディティールが知りたい。
そして、そう感じている人は、意外と多いんじゃないかなと思っている。そのへん、もう少し掘り下げて考えたいです。
『むかしこっぷり』には10の短編が入っていて、その中でも『ポプラのはなし』がとても好きでした。よかったらぜひ。
あしたもいい日になりますように!