くだらないファンタジーを愛する大人になりたい
クリスマスイブにふとんに潜りこんだときのあのドキドキを、「今日は絶対寝ないぞ」と鼻息を荒くした幼い誓いを、今はただただ懐かしく思い出す。
空飛ぶソリに乗ってやってきて、ツリーの下にこっそりプレゼントを置いていく。だけど、決して姿を見ることができない“サンタさん”。
その存在を信じなくなるということが、すなわち大人になるということで、大事に抱えていたファンタジーが、薄く薄く色をなくしていってしまうということで。大人になっていくって悲しいなあ、と思っていた。
だけど、ファンタジーが“見えないものを信じる”ということであるならば。大人の世界にだって、ファンタジーはそこら中に溢れているなあと、最近思うようになった。
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たとえば、ショーウィンドウにひとつだけ残ったチョコレートケーキを、滑りこみで買えたとき。もしかしたらその瞬間、どこかで誰かが、ふと私の幸せを祈ってくれていたのかもしれない。
たとえば、目玉焼きが完璧な半熟で焼けたとき。天国のおじいちゃんが、緑茶をすすりながら、「おいしく焼けますように」ってこっそり応援してくれていたのかもしれない。(天国にも緑茶はあるんだろうか)
ラジオを聴いていたら急に流れ出した、大好きな曲。もしかしたら、この前街中で道を案内した人からの、ささやかな恩返しかもしれない。
本屋でふと手に取った文庫。もしかしたら、私の前に、尊敬するあの作家が手に取っているかもしれない。
レストランでテーブルに並べられたナイフとフォーク。もしかしたら、私の前に、大好きなあの俳優が使ったものかも……間接キスかもしれない……!
ああなんて素敵な世界。世の中には目に見えないものがたくさんあるけど、見えないからこそ、何だって信じることができるのだ。
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もう、クリスマスイブにそわそわしたりしない。「いちりんしゃがほしいです」と手紙を書くこともなければ、「サンタさんが入ってこれるように」って、窓の鍵を開けて寝ることもない。
だけど、ファンタジーはそこら中に生きている。どうせなら空想に心を踊らせて、楽しいことを信じて、日々暮らしたい。大人はみんな、毎日きっちり現実に向き合ってがんばってるからこそ、だからこそ。
今この瞬間も、あなたのことをふと思い出して、「幸せに生きてるといいなあ」って願っている人が、きっといると思うんです。そんな感じで、メリークリスマス。
あしたもいい日になりますように!