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ソウルコンの帰り道、韓国のコンビニで泣いた話


ここには、彼らの素晴らしい公演についてのライブレポではなく、予想外の感情の波風にのまれた私の話を書き留めておこうと思う。



公演前の私

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2019年10月29日。
ソウルの蚕室総合運動場、SPEAK YOUR SELF THE FINALの最終日に私は居た。

初めてのひとり旅に、初めて彼らを目撃する信じがたい瞬間が目の前に来ていた。

会場に入った後、今この裏側に、鼻歌を歌ったり段取りの確認をしたり、ストレッチをしたりする彼らがいることが信じられなかった。アリーナ席が想像以上に近くて生きて帰れるか心配になる中、帰り道の私のことを考えた。

帰り道の私は、どんなことを思うだろう。
多分何かが始まって何かが終わる。
温かい感動だけに包まれて生きる希望に満ち溢れるだろうか。そう考えただけで目に涙を溜めた。

前日ネイルのデザインを迷ったりした。
開演時間が近づく中、肌寒さを感じ、持ってきた上着を羽織っておいた方がいいかなと思ったものの、私は前日に韓国で手に入れた白いカーディガンのままでいた。その方が暗闇の中では綺麗かもしれなくて、その方が可愛いと思ったから。

今思えば、まるで駅前で彼が来るのを待っているみたいな心持ちじゃないか。今から彼が「お待たせ」と言って現れるのは、約7万人の光の前だというのに。

始まる頃、白いカーディガンなんてわかるはずもなく真っ暗だった。
動悸がした。大きな歓声もしくは悲鳴が響いた。

公演後の私

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肉眼で姿が見えた、双眼鏡は必要なかった、生の声、リアルタイム、7人ともそこにいた、実在していた、飛んでいた、踊っていた、歌っていた、じゃれていた、泣いていた。
普段日本のとある部屋の中で画面でみる人たちが、ほんの数十メートル先にいる信じられない距離の縮まり方だった。

勿論素晴らしかった、登場からずっと流していた涙は、そこに存在していることに対しての感動だ。かっこよすぎる、こんな人達いるんだ、実際にそこにいる、そうして涙が止まらなかった。

ユンギさんは、歌っていたし、踊っていたし、会場を煽っていたし、水を飲んでいたし、滑り台を登っていたし、はしゃぐようにして手を振っていたし、投げキスを飛ばしていたし、最後はあの優しい眼差しで微笑んでいた。

つい近くに飛んでいって触れたくなってしまうような、かっこよくて可愛くて仕方ない光景、それは永遠に届かない距離だった。当たり前だけど、みんなの彼ら、みんなのユンギさんだった。

今までで1番近い距離にいるはずなのに、今までで1番遠く感じる自分がいることに気がついた。

多分どこかで私は、偶然の橋を渡って彼らに惹き寄せられた時からずっと、曲を聴くときも、ツアーのコンセプトも、チケットが当たったときも、まるで君のためだよと言ってもらっているように彼らを、ユンギさんを本当に近くに感じていた。
近くに来て君は大丈夫としゃがんでくれる、微笑んでくれる、背中を押してくれる。それは嘘じゃない。それこそが、私が彼らに救われた理由であり、彼らのことを特別に感じる理由だ。

でもあの会場で私が、ユンギさんの瞳に映る無数の光の中のたったひとつだった瞬間、それを肌で感じた時、それがどんなに幸せなことか体感する中で、心のどこかはチクリと痛かった。どうしても寂しかった。そんな風に感じる自分のことも嫌だった。

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帰り道

公演前に想像していた帰り道の私と180度違う予想外の私がそこに居た。
公演中羽織ることのなかった上着を羽織った。

電車はなぜか一駅乗り過ごした。
言ってしまえば絶望だった。とんでもない幸せに包まれた絶望、今思えばひとときのこと。でもこの時の私は、大好きで仕方ない人をこれからどんな風に好きで居たらいいんだろうかなんてことすら脳によぎっていた。
私は思っていたよりも、正しくなくユンギさんが大好きだった。
ホテルまで、まるで恋人に振られたような形相で一歩ずつ歩いた。

コンビニによったけどメニューが全く目に入ってこない。この3日間ほぼ食べていた色んな種類の海苔巻きをぼんやり眺めていたら、海苔巻きがぼやけて見えなくなった。

泣いていた。それも涙がひとつ流れたらどんどん出てくるように止まらなかった。

店員のおじさんにバレる前に、足早にコンビニを出た。

ホテルに着いて気を失うように寝てしまってから、翌日、無音の中で荷物を詰めた。彼らのことは今は置いておきたいのに、気づいたら歌を口ずさんでいる、掛け声まで口ずさむ。

私の心の色とは裏腹に、ソウルは真っ青な晴天だった。彼らのこと置いておきたいというのに、私の足はポップアップストアに向かった。
感情だけ置いてきぼりになったまま、それでも私の脳は彼らを、ユンギさんを、考えることをやめられなかった。

出発ロビーから見える最後のソウルの景色、夕焼けを見ながら、彼らが息をする、ユンギさんが生きているこの土地を離れたくないと思った。

今の私

帰国後、感情を処理するまでにすごく時間がかかった。今日で公演の日から6日目だ。どれだけ引きずったら気が済むんだと驚いた。でも今やっと、文字を打っている。

結局私は、それでもユンギさんがずっと同じように好きでいるんだと思った。

荷物を片付けてる最中、家に置いていったスケジュール帳に、韓国に持っていったユンギさんの写真を挟み直した時、ユンギさんのことをお守りみたいに感じた。

あれだけソウルで遠いことを確認して泣き出してしまったはずなのに、家に戻ってきたら逆にユンギさんとまた距離感が縮まってしまうバグが起きた。

ユンギさんは私にとって、救いであり、お守りであり、幸せであり、絶望だ。

ユンギさんのことを考えると不安になる、ユンギさんのことを考えると安心する。好きだから救われる。好きだから幸せで、好きだから絶望だ。

彼らが息をするあの日、あの地で過ごした夜のこと、誰にも知られることがない帰り道のこと、私の気持ち。

ユンギさんがあっちを見てと言った先にあった何もない空、何もないでしょと笑って見せたユンギさんの声、ユンギさんが歌うたびにユンギさんの匂いがする気がした、するはずはないのだけど。

ああ、ほろ苦くて胸が締め付けられる記憶のように思っていたけど、私そう勘違いしてしまうくらいすごく幸せだったのかもしれないと、今これを書きながら思った。

痛いと感じるくらい鋭い幸せだったのかもしれない。

一生に一度あるかないかの、あの瞬間は最初で最後の帰り道。

不思議と、今、花樣年華のように思った。


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