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なつこになりたい

1週間更新を怠った原因は、友に急に誘われて新潟県の十日町に行ったためだった。

中々会えない最愛の友と過ごすのが目的で、特に行き先を目的としない旅程だった。はずだった。

十日町になぜか強く惹かれてしまった。
今まで日本を訪れて感じなかった感情があった。

「住んでもいいかも」

電車が3時間に一本しかない時間帯もあるような田舎だが、芸術に寛容で、洒落た掘り炬燵式のカフェもあり、日本一美しい棚田もあり、サウナ付き温泉も周囲に数カ所あり、米が美味しく、子どもの教育に力を入れ、博物館もありえん綺麗で楽しめる、十日町に魅力を感じたのだ。


十日町の奥に一人こっそり住んで、週一でこっそり買い物に行って大声で出しても怒られやしない世界に住みたい。

きっとそう思ったのも、日食なつこの影響なのだろうか。
孤高の気高さを持つ彼女の人性に惹かれたからなのだろうか。

彼女は今東北の人里離れた山奥に住んでいるという。
彼女の岩手は寒く雪がよく積もる地域だ。
十日町にまだ一回しか行ったことないが、豪雪地帯のここに住んだらなつこに近づける気がする。なんとなく。

グラグラしているまま適当に就職するより、未知の体験が出来る世界で生活する方が、私は積極的に行動できる気がしてならないのだ。

この思想は結局就職からの「逃げ」と言えるのだけど、私は今まで「逃げ」で人生の分岐点を選択してきたのだ。
結果「逃げた先」で、全く後悔のない生活を送ることができていた。それは、私は「逃げた先」で挑戦し続けたからなのだろう。

部活をリタイヤし、帰宅部でMMDと動画編集を独力で勉強しニコ動投稿した結果、2投稿目で2万再生を記録したこと。
行きたかった国公立大学を浪人をしたくないという理由で諦め、少数科目だけで受かった大学の和太鼓サークルで、まとまりのない同期を、自分を突き動かすエゴだけでひっぱり、最高の引退舞台を迎えたこと。
院の勉強に前向きになれず、逃避のために世界史の勉強を生かした小説を書き始めた結果、フォロワーを徐々に集め、今日の夜、ずっと憧れていた作者様とお話しできる機会を頂けたこと。

料理も家事もできず、今まで親族と共にする一つ屋根の下から離れたことがない人間が都会の大企業の新卒を捨てて、未知の雪国の田舎で営むなど、あり得ないが、なぜかワクワクするのだ。舐めすぎなのだが、危険がある場所に行ってみたいと思うのは性なのか。

いきなり全てを捨てる必要もなく、1週間から暮らせるシェアハウスがある。まずはお金を稼ぎ一人で生活してみようじゃないか。1週間、スタッドレスの車を借りて。

命をかけて未知の世界で。

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