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『HiGH&LOW THE WORST X』に想うこと。

ヘッダー、4Kで引き伸ばして額縁に入れたい。

HiGH&LOWはいつだってサプライズが好きだ。

ほぼ助走なしの特報解禁。朝からTLはお祭り騒ぎだった。数枚のビジュアル、数十秒の映像。
それでも情報量の過多さはさすがHiGH&LOW
「???」「!!!」で埋め尽くされる識者の脳内。
筆者も例に漏れない。
仕事は手に付かず、休憩のたびに特報を見返した。
タバコの吸えない休憩が苦ではないのは初めてだった。

あらすじとしては

物騒すぎるね

「い、イカれてる…」と初見の方は思うだろう。
安心してほしい。ハイローオタも同じ感想だ。
大体この短いあらすじにいくつ「高校」の文字が出てくる?
文章だけで熱量が伝わってくるシリーズもそうそうない。

お話としては「鬼邪高が強くてヤバい高校、しかも3つの連合軍!と闘うよ!!あと鳳仙と鈴蘭も出るよ!」そんな親切設計だ。
素晴らしい、自分の需要を深く理解している。

どう考えても詰め込みすぎ、とは常識人の意見だ。
いや、別にHiGH&LOWに常識がないわけではない。
HiGH&LOWでは常識そのものが違うのだ。

前作では「幼馴染6人の話」「村山の卒業」「全日の抗争」「鳳仙学園参戦」…あらゆる要素をじっくり煮込んで語り尽くす、という頭のおかしい(大褒め言葉)ことをさらりとやってのけた。

そもそもHiGH&LOWはいつも尺が足りない。
喧嘩屋、テキ屋、クラブ経営者、無国籍人、ヤクザ、パリピ、元囚人、そしてMUGEN…が一堂に会して殴り合いをしているようなシリーズだ。
新作が出るたびに二桁数の新キャラが列挙してくる。

それで言えば本作はむしろ小規模なくらい(!?)かもしれない。
なにせ登場人物はほぼ高校生のみだろう。
そう思うと少し微笑ましくすらある。

そうは言ってもHiGH&LOW、小さくはまとまる気はなさそうだ。
やっぱりカメラワークは無茶苦茶だし、当然のように人は飛んでるし、新顔も堂々と世界に居座っている。

そして最高の男たちも健在だ。

はぁ〜〜!!相変わらず顔の作画が良い〜〜!!

前作にて顔面治安二大巨頭だった2人が!!!!
あの沼落ちを続出させた性癖の塊2人が!!!!
共闘してる!!??!!

最高ですね…おやすみなさい…

まぁ真面目な話、轟には「村山卒業後の定時と楓士雄率いる全日の架け橋」という大仕事があるのでね。頑張ってほしいです。

そら村山さんいなくなったら奮うよな。
男ならワンチャン(死語)狙ってテッペン駆け登るよ。
可愛い顔に騙されて忘れがちだけど村山良樹は「100発の拳に耐えた後に100人ボコした」喧嘩の天才なので、そんな怪物が仕切ってる地区で不良なんてとてもとても

さてここで少し脱線して轟語り


以前に拝読したnoteで深く納得できるものがあった。
貼っていいのかはわからないので意訳で失礼します。

「不良を狩り、過去の自分と決別する」ために拳を振るう轟。
それは「己のため」の暴力であり、SWORDの得意とする「仲間のため」のそれとは違う。
村山に定時と全日を分断され、「拳が強いだけじゃダメ」と言われ、タイマンでは負かされ、全日からは疎まれる。
ザワのオープニング時点で轟に居場所はない。
「己のため」な人間に「HiGH&LOW」は容赦ない。
七千万円  様のnoteより
しかしここは「クローズ」の世界でもある。
楓士雄という最高に髙橋ヒロシ的な主人公がやってくる。
彼は村山にあしらわれ、轟とは喧嘩できず、サッチーには負ける。それでも人がついてくる魅力がある。人望があり、漢気、カリスマ性がある。
なにより彼には「言語」があった。
ワクワクしたら「ワクワクするな!」と喜び、困ったときには「手を貸してほしい」と助けを乞う。
不良の構文で育っていない轟にも理解ができた。
彼は「言葉」に理解を示して「拳」を振るう。
轟と世界が変わる。
「クローズ」の世界ではその強さだけで居場所がある。
轟洋介はリンダマンなのかもしれない。
七千万円 様のnoteより

目から鱗だった。
元来いじめられっ子だった轟には不良構文がまるでわからない。
殴り合えば伝わるハイロー世界の住人でもない。
自分に足りないものを探すために読書をする。肩を組まれればビックリする。生徒が揉め事を起こせば原因を聞いてみる。雨が降れば傘を差す。
当たり前の行動をしてるハズなのに浮きに浮く。
それでいて答えが出ることもない。
そんなカゴの中に囚われた彼の元に、祖父を通じてキチンとした「言語」を獲得した男がやってきた。

彼は言う。
「バカな俺でもみんなが慌ててるから鳳仙はヤバいってわかる」
「だから助けてほしい」

アタマの座を狙ってきたヤツでもある。
実質全日最強の俺には頼みたくはないはずなのに、それでも「他のみんなのためにもお前の力が絶対に必要だ」と意思表示をしてきた。
不良でもない轟にも伝わった。
轟は悪人ではない。むしろマトモな部類だ。

「足を引っ張るんじゃねぇぞ」


ハイローで浮いていた轟。
クローズの世界で「リンダマン」としての立ち位置を経た。
自分を認めてくれて、自分を認められる場所こそが「居場所」である。
以前のような圧倒的飢餓感からくる空腹の猛獣のような強さはもしかしたらないかもしれない。

それでも確かに、そして異常に強くなっているはずである。
なにせここはHiGH&LOWなのだ。
「居場所」のある人間の強さは桁違いである。

猪突猛進、ではないかもしれない。
あの尖り切っていた昔の彼を知っていると少し寂しい気もする。
ヘッダーの場面では小田島を後ろからゆったり眺めている轟がいる。
不良を誰よりも憎んでいた轟が?
全日の面々と横並びで歩く轟もいる。
「格下」と切り捨てていた彼らと。

そして件の飛び蹴りでは以前よりも明らかに高く跳んでいる。

ここはクローズの世界でもある。

「クローズ」より

「高く跳べる」男は最強で最高だ。

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