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『おばあちゃんの可愛い証模様』

ある朝、
少女が着ようとしていたまっしろな半袖に
一本の
線が生まれました。

『初めまして わたし たてしまです。
あなたの初恋なまっすぐで純粋な心をあらわします。』


♪たてしま♪たてしま♪たてしま♪
♪たてしま♪たてしま♪たてしま〜♪


時が過ぎ成人式を迎えて一年後
なんと
「よこしま」という新しい線が出てきました。


♪たてしま♪よこしま♪たてしま〜♪
♪よこしま♪よこしま♪よこしま〜♪

『はじめまして わたしよこしまです。
友達からあの人を奪ってしまった
あなたのひきょうでよこしまな気持ちをあらわします。』


それから時が経ち
♪たてしま♪よこしま♪たてしま♪よこしま♪
♪ななめしま♪ななめしま♪

「ななめしま」という線が生まれました。


それからもっと時が経って
♪たてしまよこしま♪くるくるしま♪
♪ななめしまにギザギザしま♪


たくさんの新しい線が生まれました。


彼女のまっしろな半袖は
歳を重ねるごとにいろんな出来事を経験するごとにさまざまな線がかさなりあって
まるで模様ができているようにみえました。



それからまた時が過ぎてその半袖の模様は
一つの大きな円になりました。

♪くるくるくるくるくる♪
♪たてしまもよこしまも全部まとめてくるくる♪
♪くるくるしま♪くるくるくるくるしましま♪


円がたくさん重なって優しい模様ができました。



それから、またいくつも歳を重ね
彼女は母になり
子供が生まれ、新しく小さな円ができ
またたてしまが生まれたり
よこしまが生まれたり
たくさんの出来事を知り歳を重ねて
孫ができてまた新たな円ができました。


彼女の半袖には
綺麗でまっすぐ、途中で途切れた線や
枝分かれしている線もあったり柔らかい丸い線もあったり

まるで彼女の生き様を表す証模様が出来ました。




ある朝、
三つ編みをした女の子が話しかけました。
「おばあちゃん、の半袖の模様可愛いね。
わたしもその模様の服が欲しいな。」

おばあちゃんはにっこりわらうと
耳元で力を振り絞って小さな声で
こういいました。



『            』


その言葉が彼女の最後のことばになりました。

最後の日、
ベットで眠るように
安らかなおばあちゃんの着ていた
半袖の模様はたてしまもよこしまも無く
くるくるしま、ななめしまも無くなって


初めて人を愛した時に
現われたあのまっすぐな線が
薄く薄く消えないまま
ずっとずっと残っていました。









『おばあちゃんのこの模様はね
おばあちゃんだけのもので、
誰にもあげられないの。

いいかい。これからうまれてくる
どんな線もどんな模様も自分だけのものを
大事にするんだよ。』



終わり

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