「Lemon」を想像してみた

「カチャ」と扉が開き一人の女性が入って来る
「ただいま〜」(セリフ)女性は仕事の疲れからそのままベッドに倒れ込む「フー」と一息つき
目をつぶりふと女性は昔のある人の事を思い出していた。
それはまるで昔の忘れ物を取りに帰る様に「想い出」と言う埃を払う様に。

女性はその人に隠し事をしていたが、その人が教えてくれた
「戻らない過去」を知った彼女はその伝えきれなかった昏い過去を
その人が居ない今永遠に昏い過去にするしかなかった。

彼女はもうこれ以上無い深い深いキズを心に持ちながら日々を過ごしていた。

女性にとってその人と過ごした毎日は「悲しみ」も「苦しみ」もその人と共に愛せる程
であった。それはまるで苦くも爽やかな匂いのレモンの様に
外を見ると雨が降っていた、雨が光を遮っているだが彼女にとってその人が「光」の様なものだった。

目をつぶりながら彼女はその人の背をなぞった。
幼い日の想い出の人なのか彼女は輪郭を大きく大きくまるで鮮明に覚えているかの様に描いた。
色々な経験をし嬉しさも最後は溢れる涙に変わる。

彼女は問う「あの時何をしていたのか、何を見ていたのか」(セリフ)
その人は彼女が見た事もない顔をしていた。

「何処かであなたが、今、私と同じ様な涙に暮れ、淋しさの中に居るなら、私の事など、どうか忘れて下さい。」(セリフ)
そう願うほど今でも強烈に光輝いていた。

「自分が思うより、恋をしていたあなたに、あれから思う様に息ができない、あんなに側に居たのに…ウソみたいとても忘れられない。」(セリフ)
それだだけが彼女の中に確かにあった。

彼女はおもむろに起き上がり部屋の明かりをつけた。
彼女は台所に立ち、夕飯の仕度をしだす。
視覚の隅にレモンが入る、彼女はそのレモンを手に取り大きく一度匂いをかぐ。
彼女は嬉しそうに微笑み、鼻歌交じりに料理をしだした。

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