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とうめい


東名高速の窓の外はつめたい雨と風
ひんやりとした夜の気配が
太ももあたりから胴を伝い
言葉になる

わたしはだいすきなあなたに会うために
はじめての夜行バスに
のっている

暗やみの車内で
あなたが発つ前に残した
6時間にもわたるプレイリスト

聴いている
タイトルはたった一字
わたしの名

いつも暖かい私の手を
もっと暖かい両手で包むあなたに

「アップルミュージック派なんだよね」と
照れ隠しした



離れているあいだ
「夢にも出てきてね」って
あなたはよく言う

そんなことより
考えごとでおなかが痛くなったり
迫り来る明日に体がこわばったり
私を救おうとかなんとかって悩んだり

そういう夜を最初から知らないみたいに
夢を見るすきまもないくらいに
深くおだやかに眠ってほしい

まるでからだが透明になったみたいに
深く深く眠ってほしい

今夜はもうおやすみなさい
わたしの恋人
やさしく暖かなひかりが
明日の朝をたたえますように

白飛びしてしまった2人の日常が
淡い翳りを取り戻しますように

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