Singularityはテテの宇宙

今朝は目が覚めて、
「ああ、テテのシンギュラリティが見たい」
と思った。 
テテが最後にシンギュラリティをしてからどれくらい経ったのだろう。(「シンギュラリティする」という動詞を勝手に作る盲目さ。この言葉をテテ以外には使いたくないのだ。私の中でシンギュラリティという言葉はテテ独自の芸術の意味として見事に一人歩きをしている。)

最後に舞ったのは2019年10月29日のソウル。
約1年3ヶ月も経ってしまった。


SYSツアー最終日、これでもう当分見ることは出来ないという興奮と緊張の中、テテは黒い鳥となり舞っていた。


これが見納めかもしれないと思った時、そのあまりに大きな喪失感のせいだろうか、私はその悲しみを封印した。だって認めたくないじゃん、これが最後かもしれないなんて。


「大丈夫、また見たければいつでも円盤で見れる。どうせライブ会場でシンギュラリティを見たことはないんだから、今までと同じでしょ。」 

いやいや、全然同じじゃなかった。


その後ジワリジワリと迫り来る寂しさとともに、だんだん分かってきた。

今までと全然同じじゃない。


あの頃は「次のシンギュラリティがある」という楽しみの中で生きることが出来た。そしてその楽しみは永遠に続くものと思っていた。
しかし、もう待てど暮らせどあの寂しげな男の笑みは見られない。

もちろんインナーチャイルドを楽しんで待てば良いのだが、シンギュラリティにはシンギュラリティの良さが、インナーチャイルドにはインナーチャイルドの良さがある。この2つはテテのソロという括りではなく、全く別の物語だ。

好きな物語の新しい章を見られないのは寂しい。

リーダーのナムさんが、テテの事を考えて書いた曲。
メンバーの中で唯一テヒョンだけが活かすことが出来る、と言った曲。

テテが突然元気のない悲しそうな顔をした時、それは微笑んでいたシンギュラリティの男が白い仮面を被ったときのよう。

ナムさんはそんなテテを見守っていたのかもしれない。それを歌詞に昇華してあげて、テテはどんなに救われたんだろうと思う。

《Singularityは、仮面で自分の内面を隠す男を表現したかったんです。笑っているように見えて心では泣いている。心は憂鬱だけど人には嘘をついて笑顔を見せる。そういう感情を日によって演じ分けていました。何度観ても同じステージにならないように意識しました》
                         キム・テヒョン
Japan Official Fanclub Magazine vol.7

”シンギュラリティ”とは 、weblio辞典によると
《人工知能(AI)が人間の能力を超える時点 》
という意味であり、バンタンの置かれた環境を見た場合、この《人工知能》は、仕事として後天的に身に着けた、人工的な「頑張って笑う」スキルに思えたり。
そしてテテの説明であるように、「笑っているように見えて心では泣いている。心は憂鬱だけど人には嘘をついて笑顔を見せる」。心の憂鬱を笑顔で隠した時、それが《人間(キムテヒョンの本心)を超えてしまった時点》なのかもしれない。でも、実際のキムテヒョンは自分の気持ちに嘘はつかない。私はテテの喜怒哀楽を信用している。だから、その《時点》を超えることはきっと無い。


美しく妖艶なキムテヒョンが淋しげに笑って立ち去るまでの約3分間、容易に息をしてはいけない気がした。自分の呼吸音がテテの世界を汚す気がしたから。(テテを見てると鼻息が荒くなるから苦しい。)
そして、ステージからステージへ渡る間の数ヶ月間、または数日間のキムテヒョン自身の変化を目の当たりにするような感覚であり、それゆえワクワクとドキドキ感があり、テテの賢さと努力と、力強くも儚く、あわい青い炎が見られる貴重な体験だった。

どのステージのテテにも、信じられないくらいの色気、混沌の中にいる男の色気があり、その寂しそうな顔に手を差し伸べようとすると、その途端に、こちらの下心を見透かされて笑われる。
その色っぽさを素晴らしい言葉で表現した海外のかたの感想がある。

《彼はまるで悲鳴を食べ、ますます美しさを磨く魔物》

悲鳴とは、言わずもがな、シンギュラリティに魅せられたアミの悲鳴である。


観客が新しいシンギュラリティに出会うということ。
それは、前回の舞台から今回の舞台までの間、
テテが何を感じて生きてきたのか、
テテの内面の揺れる雫が今回はどのように弾け飛ぶのか。

その一回一回全てが答えだった。たった一度きりの。
テテは毎回毎回、アミのためにパフォーマンスを変えていたから。

全身全霊で誘ってくる揺れる眼差しをしても、決して俗っぽい娼婦や男娼のようにはならない。優しさから出来あがった品格があり、どこまでも純粋だ。だからこそ、キムテヒョンには容易に触れられない。誰も。テテはそれでも何かを待っている、きっと。
触れて欲しいのに、誰も触れられない。自分に触れて欲しいのに、もう一人のキムテヒョンがそれを阻んでいる。みんなから愛を送られても、テテが両手を広げてそれを受け取ろうとしても、その直前で、それを阻むもう一人のキムテヒョンがいる。テテは愛をずっと探している。
そんなテテの葛藤はきっと、テテの宇宙の法則。それゆえ、指先が触れたと思った瞬間に手からするりと離れて行ってしまう。悲しみと色気と、本当はしっかりと握りしめていたいのに、というもどかしさを生み、愛を乞う人キムテヒョンの危うい美しさの源となっている。


誘ったくせに、すぐ消える。
笑ったくせに、すぐ淋しそうな顔をする。

月が雲で覆われていくように。

水面に映ったテテに触れたとたん、ぱらぱらと光って散らばって、どこかへ消えてしまうかのように。

普段はあんなに無邪気なテテだけど、心の奥底には誰も触れられない。誘っておいて、ギリギリのところで白い仮面で隠す。その仮面の下はあの寂しそうな顔。

シンギュラリティはそんなテテの内面を現しているかのようだった。

あの目、あの髪、あの指先、
汗で濡れた前髪を払う美しい手、
その隙間から覗くまつ毛、
光る瞳、
テテの足元で波のように揺れる衣装、
ベルベットのようにふんわり包んでくる優しいハスキーな歌声、その全てが同じ一連の流れの中で美しい楕円を描く。

夜の海の水に映った、きらきらと不規則に輝く月の光のように。

テテには重力が働いていないように見える。

ふわりふわりと。
水面の上を舞うように。
月の上を歩くかのように。

優しい無重力感。


物理的な宇宙の法則はキムテヒョンには通用しない 。

テテだけの優しい宇宙がある。

シンギュラリティはテテの宇宙だ。
みんなが行きたかったテテの宇宙。

この特別な宇宙に招待される貴重な時間がシンギュラリティだった。



画像1
画像2
画像3
画像4
画像5
画像6
画像7
画像8
画像9
画像10
画像11
画像12
画像13


画像お借りしました🌙
ありがとうございます✨

1.2.3.6.7.11.12枚目 NUNA V 様
4枚目 WinterStrawVerry 様
5枚目 RULER.様
8.9枚目 TO MY DARLING V 様
10枚目 REALV 様
13枚目 BTS official facebook

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?