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全固体電池

下のPDF、MSDS(Material Safety Data Sheet)と言います。私たちが輸出入の際に各国税関に提出する資料です。金属リチウムのMSDSです。

10.安定性及び反応性の「安定性・反応性」によれば、

常態は安定だが、化学的に極めて活性が強く、常温で水分、二酸化炭素、窒素、酸素と反応する。水と激しく反応し、引火性の高い水素ガスや腐食性ヒュームの水酸化リチウムを生成する。
水分、ハロゲン化炭化水素(例.クロロホルム、四塩化炭素) 、テフロン、二酸化炭素、強酸類、強酸化剤、可燃性物質、コンクリートリチウムは水、大気中の水分、皮膚と反応し、水酸化リチウムを含んだ苛性液を生成する。したがって、皮膚・眼・粘膜とリチウムとの接触は化学やけどを引き起こす。反応すると発熱し、リチウムの表面積が大きい場合は発火する恐れがある。

全固体電池は金属リチウムを負極に使いますので、いろいろと開発が難しい点があるのは理解できます。マスコミは、製品化間近といいますが、それでもクリアしなければいけないポイントが多い。ただ、それをマスコミが読者に伝えるのは容易ではないということ。トヨタなどは、カーボングラファイトと金属リチウムを混合して安全性に配慮する計画のようですが、これも非常に難しい技術。

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フォルクスワーゲンは、アメリカのスタートアップ企業と組んで独自全固体電池を製造するつもりのようですが、大量生産にまでこぎつけられるか、ちょっと疑問に思います。

車載用「全固体電池」、迫る日独決戦
トヨタは特許で先行

ポスト・リチウムイオン電池として期待される全固体電池の実用化を巡る競争がグローバルで過熱してきた。特許で先行するトヨタ自動車は年内に試作車の公開を検討する。独フォルクスワーゲン(VW)は米新興と組み電気自動車(EV)の航続距離を大幅に延ばす電池生産に2024年ごろから乗り出す。現行電池の生産規模で高いシェアを持つ中韓勢に対し、技術面の先行優位を生かせるかが問われる。

「全固体電池はリチウムイオン電池開発の最終章だ」。VWの電池開発トップ、フランク・ブローメ氏は言い切る。同社は出資する米シリコンバレーのスタートアップ、クアンタムスケープと組んで開発中だ。

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独VW、新興企業と組み開発加速

全固体電池は、電気を運ぶリチウムイオンが動き回る電解質に固体の材料を使う。電解液を使うリチウムイオン電池に比べてショートしにくく、発火などのリスクが小さい。電極と電解質を交互に並べて積層化することが容易なことも特徴だ。そのため、既存のリチウムイオン電池より重量当たりのエネルギー密度が高まり、電池の大きさが同じでもEVの航続距離を延ばすことができる。

クアンタムスケープの全固体電池は金属リチウムを負極に使うなどして、航続距離をリチウムイオン電池より1・8倍長い730キロメートルに延ばせる。15分あれば全体の80%まで充電ができる。電池の劣化も進みにくく、38万キロメートル走っても当初容量の80%を維持できるという。

VWはEVシフトの切り札として新興企業の知見も取り込みながら全固体電池の実用化を急ぐ。24~25年に量産を開始する計画だ。5月14日にはクアンタムスケープがVWと合弁で試験生産ラインの設置場所を年内に決めると表明した。独北部が有力候補だ。

当初の生産能力は年1ギガ(ギガは10億)ワット時で、その後に20ギガワット時分の能力を追加する計画だ。現在の欧州全体の電池生産能力の半分強にあたる規模で、EV数十万台分をまかなえる。

独BMWも米スタートアップのソリッドパワーへの出資拡大を5月3日に発表。同社の全固体電池は理論上、航続距離がリチウムイオン電池に比べて最大2倍になるという。BMWは22年に試験用電池を調達、25年までに全固体電池を載せた車両の路上試験を始め、30年までに発売する計画だ。

ドイツメーカーが攻勢をかける一方、開発で先行するのは1000超の特許を持つトヨタだ。20年代前半の実用化を目指す考えで、21年中に試作車の公開も検討している。同社が開発する全固体の性能は、既存電池と同じサイズの場合、航続距離は2倍超に増える計算だ。電池開発ではパナソニックとも提携した。日産自動車も20年代後半に全固体電池を実用化する。平井俊弘専務執行役員は「大型車でEV化を進めるには今後必要になる技術だ」と語る。

コストが課題

全固体電池の課題は、足元でリチウムイオン電池に比べて4倍以上高いとされるコストだ。米フォード・モーターなどの試算によると、EV向けリチウムイオン電池は現状で1キロワット時当たり1万3000円程度で、30年には同1万円以下になる。一方、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がトヨタなどと取り組むプロジェクトでは、量産技術の確立や量産効果などで、全固体電池のコストを25年に同1万5000円、30年には同1万円とリチウムイオン電池並みまで下げる目標を掲げている。

コストを引き下げる技術の開発競争も始まっている。米シリコンバレーに拠点を置く新興のサクウ・コーポレーションは3Dプリンターを活用して全固体電池をつくる技術を持っており、「競合製品の半分のコストで生産できる」

EVコストの3~4割を占める電池は低価格化が進み規模がモノを言う製品の代表格となった。中国の寧徳時代新能源科技(CATL)や韓国のLG化学など中韓勢がリチウムイオン電池で7割超のシェアを握る。電池システム開発のエナックスの三枝雅貴社長は「コスト面でもはや電池は中国が制している」と指摘する。日本勢などは技術力をテコに全固体での巻き返しを狙う。

日本企業、素材で存在感

富士経済によると、全固体電池の世界市場は35年に2兆1000億円になる見通し。EV向けが注目される中、小型のウエアラブル向けなどでも広がる可能性がある。

スマホ部品などで強みを持つ村田製作所はソニーグループから電池事業を買収して参入。電子部品の開発技術を生かして全固体電池のウエアラブル応用などを狙う。21年度中に野洲事業所(滋賀県野洲市)に量産ラインを設置し、ウエアラブル端末向けに供給する。最終的には月産10万個の生産量を計画している。

村田製の全固体電池は電解質に「酸化物」を用いる。EVで主流の「硫化物」に比べて大容量、高出力の用途には向かないが、電子部品と同じように基板上に配置できるため、バッテリーを置く空間を狭めてデジタル機器そのものを小型化できる。同社はこれまでスマホ向けに回路基板「メトロサーク」などの新技術を供給し、スマホの高性能・小型化に寄与してきた。こうした実装技術を電池分野にも展開する。

村田製作所が開発した全固体電池

ライバルのTDKもセラミック技術を使った超小型の全固体電池を既に量産しており、調理用温度計などに出荷している。こうした民生機器で固体電池技術が発展すると、イヤホンやスマートグラス、指輪型端末や体に埋め込む端末など、より体に近い部位にもウエアラブル機器を安全に使えるようになる。

固体電池の開発をめぐっては日本企業による素材開発も相次ぐ。特に主要材料では、電解質で三井金属が埼玉県の研究所で設備を稼働させたほか、出光興産も千葉県市原市に生産設備を新設する。日本電気硝子も正極材に結晶化ガラスをつかった電池を試作、安全性を高めている。いずれも素材のイオン技術や樹脂の品質改良技術の応用などに強みを持つ。

もともと既存のリチウムイオン電池は「正極材」「負極材」「セパレーター(隔離材)」「電解液」の主要4素材を日本の化学メーカーが握ってきた背景があり、この強みを固体電池の分野でも生かせるとの見方がある。本格化しはじめた電池の革新は日本の部品・素材企業にとってのチャンスとなる。

驚きの性能を示す米QuantumScapeの全固体電池

既存の車載向けLIBの体積エネルギー密度は約700Wh/L超。QuantumScapeの新型電池はその約1.3倍しかない。にもかかわらず航続距離は1.8倍だとするからだ。考えられるのは、セルをパッケージ化した際のエネルギー密度の低下幅が小さいということだ。実際、同社は2021年2月16日に、セルの多層化に成功したと発表した。これは液体電解質の電池では非常に難しく、全固体電池ならではの技術で、パッケージ化によるエネルギー密度の損失の大幅低減につながる。

全固体電池はEVの未来を変えるか。
フォード・BMW出資の米ソリッドパワー
140億円の資金調達

全固体電池については、独フォルクスワーゲングループが支援する米クアンタムスケープ(QuantumScape)や、米ゼネラル・モーターズなどが出資するソリッドエナジー・システムズ(SolidEnergy Systems、SES)など、他の電池スタートアップも技術開発を進めており、競争は激化しつつある。

フランク・ロイドのエッセイ集


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