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焼酎、プリーズ?

お分かりになる方には分かりますよね、このセリフ。
日活の「太陽族シリーズ」2作目「狂った果実」で、三番手の岡田真澄がみんなで横浜のナイトクラブへ繰り出した際に、ウェイターが彼の顔立ちを見て、「Excuse sir?」と言い直した時にトッポい感じで返すんです「焼酎、プリーズ?」って。
このシーン、私、好きで好きでたまらないんです。
なんかもう、岡田真澄のすべてが凝縮されているような気がして。

彼はこの作品ではプレイボーイ担当なんですけれど、女の子との別れ方もまた、小洒落ているんです。
「ご縁と命がありましたら、またお会いしましょう」って、もちろん激怒した女の子にはひっぱたかれちゃうんですけれど。

もちろん、この作品で初主演をつとめる石原裕次郎をスターダムに押し上げるために作られた作品で、裕次郎の魅力がふんだんにばら撒かれているんですけれど、裕次郎の弟役を演じる、これが映画デビュー作の津川雅彦もいいんです。

ラストシーンの冷徹な眼光を見て、あ、この子伸びるわ、って思ったんですけれど、違いますよね、私がこの作品を見た頃、既に津川雅彦は初老の名俳優として大活躍していたわけですから。

この作品での津川雅彦のなにがいいって、まだ紅顔の美少年で、上品なんです。
純情さと上品さと冷徹さを兼ね備えた存在感は、やっぱり育ちの良さですね。
裕次郎だって裕福な家庭のボンボンでしたが、津川雅彦はバックボーンが違います、マキノ一族ですからそんじょそこらの芸能一家のご子息ではありません。

私、大映の映画をほとんど見ていないんですけれど、大映にはこんな風に私を惹き付ける役者さんがいないんですよね。
所詮チャンバラからヤクザ映画でしょ、みたいな。
品がないと言うのが私の大映観です。

狂った果実のヒロインは、裕次郎のご指名で北原三枝が演じています。
魔性の女設定なんですが、だったらもうちょっと突っ込んでえげつないくらいのガッツを見せて欲しかったかな?
ま、この方は松竹からいらした方ですから、そこまでワルにはなりきれないんでしょうけれど。
そして、そんなところが裕次郎の心を射止めたんでしょうけれど。

この作品はもちろん当時の若者向けの娯楽作品だったんですけれど、思わぬところで高評価を得ています。
フランソワトリュフォーが「この作品が素晴らしいところは、たった17日間の撮影日数で撮られていることだ。名画すなわち撮影日数の長さと比例するものではない」ってベタ褒めなんです。

たしかに青春映画としては相当のクオリティだと思うんです、この作品。
プロデューサーは水の江たき子で、「月曜日のユカ」も彼女がプロデュースしています。
この2作は見ておいて損はありません。
ターキーさん、やりますね。

狂った果実は衣装もいいんですよ。
男子のアロハシャツの柄なんか相当センスがいいし、北原三枝もお人形さんのように着飾っています。
そしてやっぱり恵まれた容貌の岡田真澄が一番イケています。

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