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楽しそうに映画を撮ってるゴダール、「はなればなれに」

この映画、ゴダールのごく初期の映画なんですけれど、日本では1990年代になってようやく公開されたものです。
この頃のゴダールの映画は一作ごとに映画を撮る楽しさが伝わってきて微笑ましいんですよね。

同じくヌーベルヴァーグのスター監督、フランソワーズトリュフォーは、作風がどちらかと言うと陰湿で、理詰めで撮っている感じ。
もともとが家出少年で、熱狂的映画ファンで映画批評を書くようになって世に出た貧乏人の上昇志向をどうしても感じるんです。

けど、おぼちゃまのゴダールは、映画制作にお金がかかることは、実際撮り始めてから分かったみたいですが、それでもヤンチャな撮影技法をいろいろ試したり、楽しんで映画を撮っているところに好感が持てます。

邦題でもゴダールの映画は得をしていますね。
「勝手にしやがれ」「彼女について私が知っている二、三の事柄」など、小洒落たタイトルの映画が多いです。

対してトリュフォーは「大人は判ってくれない」までは良かったけれど、あとは「夜霧の恋人たち」とか「家庭」とかどうでもいいタイトルで、これはひがむって。

で、「はなればなれに」なんですけれど、この映画は好奇心いっぱいのゴダールが撮ったフィルムノワールものなんですけれど、当時の妻であったアンナカリーナをヒロインに据えているんですが、これがメチャクチャかわいいんです。
大体がゴダールとアンナカリーナが結婚している間に撮られた映画は傑作が多いんですけれど、とにかくアンナカリーナを美しく撮るのはゴダールが一番良く分かっていたんでしょうね。

アンナカリーナも凡庸で、ふたりの青年の犯罪計画に戸惑う女の子を好演しています。
まだ、なんにも色がついていない状態って感じの少女から大人の女性に向かう時期の女性を等身大で演じています。

けど、話はフィルムノワールですからそこそこえげつないです。
それでもアンナカリーナとふたりの小悪党がカフェで踊るスクエアダンスのシーンは、フランス映画名シーンのベスト10に推薦したいです。

小悪党のうちのひとりは、サミーフレーと言う二枚目俳優さんで、立ち居振る舞いがエレガントですてきです。
アランドロン並みにすてきなのに大成しなかったのが惜しいです。
他の監督の映画、おそらく「ポリーマグー、おまえは誰だ?」辺りだったと思うんですけれど、「映画には王子様が欠かせない」ってことで白馬に跨がった王子様役を演じています。
チョイ役なんですけれどね。

「はなればなれに」はゴダールとしては即興撮影が控えめで、見やすい映画だと思います。
ちょっとした笑える仕掛けもあるので、見て置いて損はない作品だと思います。



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