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轟夕起子の幸子役に絶望「細雪」

昭和25年の映画ですからかなり古い方です。
戦前から活躍していた、ハリウッドで修行をしていたと言う阿部豊と言う人が監督をした、谷崎潤一郎原作の小説の初映画化です。

なんでも当時の予算で200万円だか使ったそうで、これは立派に超大作に相当すると思います。
洪水のシーンも当時はまだ珍しかった特撮を使用したそうで、これは制作陣も相当力を入れていた映画だと思います。

実際、映画のできとしては、あの長い長い小説をコンパクトにまとめるには大変だったと思うんですけれど、娯楽超大作としてはまずまずの出来だったと思っています。

けど、どうしても私はキャスティングに納得が行かない。
一番酷かったのは、幸子を演じた轟夕起子が太り過ぎていてキューピーちゃんにしか見えなかったことです。

大体が原作では、蒔岡家の四姉妹は年齢相応に見えない美女揃いって設定なんですけれど、轟夕起子は旬をとうに過ぎていて、芦屋の令夫人と言うよりはどうでもいいオバちゃんだったんです。

雪子役の山根壽子もなんだかなー。
たしかに和風美人の設定は当たっているんですけれど、声が低くて野太い。
人見知りでか細い声で話す雪子のイメージからはおおよそ遠いし。

長女、鶴子を演じた花井蘭子のことを私は女中顔と小バカにしていましたが、こうしてみると彼女が一番鶴子のイメージに合っていたかも知れません。
凜とした立ち居振る舞いで旧家の奥方をしっかり演じていらっしゃいました。

で、問題のこいさんこと末娘の妙子を演じているのが高峰秀子で、彼女が主演格の映画なんですけれど、蓮っ葉な部分が強く出過ぎてあまり品があるように見えなかったから、やっぱり役不足だったんじゃないかと思います。
ご本人ものちにどこかのエッセイで、芦屋言葉を完璧に覚えることができなくて、自分的には満足が行ってない作品だった的なことを書かれています。

小さく「香川京子」の名前がクレジットされていたので、チョイ役なんだろうけれど、どこに出るんだろう?って興味津々で探していたら、いました、こいさんと恋仲になるカメラマンの板倉の妹役でした。
まだ、充分にメーキャップを施すほどの年齢でもなかったんでしょうね、泥水から出て来たように真っ黒な顔をしていたので見落とすところでしたが、たしかに後年美人女優と呼ばれるだけの目鼻立ちはしていました。

それでもこの映画は1980年代に作られた、市川崑の細雪よりはよっぽどマシだったと言えるでしょう。
雪子と幸子の夫貞之介とのお色気シーンなんか、暗喩であっても不要なんです。
これ石坂浩二と吉永小百合ですよ、なんか生々しくないですか?
さらに雪子が嫁ぐことになる御牧役を演じていたのが、プロ野球の江本さんだったり、もうハチャメチャ。
見るに値しない映画でした。
なんでも作ればいいってもんじゃないですね。
結局、原作が一番良かったと言う凡庸なオチでした。



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