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遺伝子のいたずら?東山千栄子と原節子の母娘関係

ふと考えてみたら、東山千栄子と原節子が母娘設定で出ている映画って一作二作じゃないんです。
小津安二郎の「麦秋」、木下恵介の「お嬢さん乾杯」、義理の母娘と言う設定でしたら小津の「東京物語」もそうですね。

ビジュアルだけで考えたらこのふたりが親子であると言う事実にまったく説得力がないんです。
永遠の処女(おとめ)と呼ばれた、こぼれるばかりの美貌の原節子と、申し訳ないんですけれど、当時すでに体が真四角に見えるほどよく肥り、性別不明にまでなっている東山千栄子が、母娘役を演じると言うのはちょっとミスマッチ過ぎるように思えます。

けど、東山千栄子は若い頃はたしか貴族の家庭で育ち、結婚してからも夫婦で外遊を果たしたほどの正真正銘のお嬢なので、かなり貫禄がついてしまってからもいつも堂々としていて、動作に上品さが漂う女優さんでした。
この方と笠智衆の老夫婦役だったからこそ「東京物語」は成り立ったんじゃないかと思います。
この方のおっとりしているけれど、品のあるセリフ回しは耳に心地いいです。

対する原節子は、こんなに自己肯定感の低いスター女優さんもめずらしかったことでしょう。
小津の映画に何本か出て、ようやく女優開眼したようで、その頃です、インタビュー記事に「わたくしほど大根大根と言われた女優もいないんですのよ」と、半分怨み節のような自虐コメントをしています。

自己肯定感の低い原節子に新劇出身の実力者である東山千栄子を母親役で組ませることで、何かを学んで欲しいと、これはそれぞれの監督からの愛情だったかも知れません。
たしかに東山千栄子の娘役をしている原節子の映画はヒットしていますね。
意外と相性のいいおふたりだったのかも知れません。





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